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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1992Locomotion〈ロコモーション〉猫ひねり動作の解明とロボットによる猫ひねりの実現


河村 隆信州大学 (当時は電気通信大学大学院)
山藤 和男電気通信大学
小林 剛コマツ(株) (当時は電気通信大学)

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

動物の猫が逆さまに落下するときに行うひねり運動(以下,猫ひねり)動作に着目し,この動作の理論的解析と,それに基づく猫ひねりロボットの製作をおこなった。また,このロボットによる猫ひねり動作を実現した。

「猫ひねり」動作には物理の教科書や科学読み物などにもその記述がみられるが,その動作の説明には諸説があり,実際の現象と矛盾するもの,科学的根拠に乏しいものもあった。本研究では猫ひねり運動が角運動量保存の法則によって記述される(非ホロノミックな拘束がある)こと,それが実際の猫ひねり運動をよく表していることを明らかにした。それまで猫ひねりは猫が空中で体を(ツイストドーナツのように)ねじることによって行われていると広く信じられてきたが,この研究により,猫はねじるのではなく,空中でフラフープでもするかのように腰を回転させること(腰振り運動)と背骨の曲げによって猫ひねりを行っていることを解明した。

この原理を応用して空中で姿勢を変化させるロボットを製作して,実際にロボットに猫ひねりを行わせることに成功した。ロボットは前後2つの胴体とそれらをつなぐ,ねじれない背骨機構からなっている。また,このロボットはモータなどの回転運動を行うアクチュエータを持たず,直動運動を行うゴム人工筋(ラバチュエータ)を用いて拮抗筋を構成し,背骨の曲げ角をコントロールしている。

落下実験を通して腰振り運動によって猫ひねりが行われていることをが確認された。また,理論的解析のとおり角運動量0の状態を保ちつつ猫ひねりが行われることも確認された。