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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1985Manipulation〈マニピュレーション〉ロボットアームの動的ハイブリッド制御


吉川 恒夫京都大学大学院工学研究科

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

ロボットアームによる対象物のマニピュレーションにおいては,手先の位置制御と操作対象物に加える力制御が重要である。この位置と力を同時的に制御するための制御方式としては,インピーダンス制御とハイブリッド制御の2つの方式が知られている。このうちハイブリッド制御は当初ロボットアームの動特性を考慮しない直感的な制御則が与えられていたが,この方式だと位置と力の正確な制御が難しいという問題点があった。本研究はアームの動特性を考慮した「動的ハイブリッド制御」方式を世界に先駆けて提案したものである。まず,アームの手先の対象物や環境との接触による拘束を拘束超曲面で表現している。ついで動的ハイブリッド制御の基本式を導いている。そして最後にサーボ補償器を備えた動的ハイブリッド制御系の基本的な構成を与えている。 この制御方式は,位置と力を独立に正確に制御できることを明らかにするとともに,種々の状況におけるハイブリッド制御則を導出するための理論的基礎を与えている。たとえば,(1)拘束面が未知な場合のハイブリッド制御,(2)複数台のロボットによる協調ハイブリッド制御,(3)多指ハンドの把持と操り,(4)フレキシブルアームによる力制御,などへの拡張が行われている。
写真 動的ハイブリド 制御の実験装置
写真 動的ハイブリド 制御の実験装置
図1 実験内容
図1 実験内容
図2 実験結果
図2 実験結果

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対応論文


吉川:ロボットアームの位置と力の動的ハイブリッド制御-手先拘束の記述と関節駆動力の算出-, (PDF, 1.9MB)

日本ロボット学会誌,第3巻6号,pp.531-537, 1985.

T.Yoshikawa:Dynamic Hybrid Position/Force Control of Robot Manipulators-Description of Hand Constraints and Calculation of Joint Driving Force-

IEEE Journal of Robotics and Automation, Vol.RA-3, No.5, pp.386-392, 1987

T.Yoshikawa, T.Sugie, and M.Tanaka:Dynamic Hybrid Position/Force Control of Robot Manipulators-Controller Design and Experiment

IEEE Journal of Robotics and Automation, Vol.RA-4, No.6, pp.699-705, 1988

関連論文


[1] T.Yoshikawa, T.Sugie, and M.Tanaka: Dynamic Hybrid Position/Force Control of Robot Manipulators-Controller Design and Experiment, IEEE Journal of Robotics and Automation, Vol.RA-4, No.6, pp.699-705, 1988 (動的ハイブリッド制御則の具体的設計法とそれに基づく実験結果を報告した論文)

[2] T.Yoshikawa and A.Sudou: Dynamic Hybrid Position/Force Control of Robot Manipulators: Estimation of Unknown Constraint, IEEE Trans. on Robotics and Automation, Vol.9, No.2, pp.220-226, 1993 (対象物表面が正確には分からない場合に,その面をオンラインで推定しながら動的ハイブリッド制御を行う方法を提案した論文)

[3] T.Yoshikawa and X.Z.Zheng: Coordinated Dynamic Hybrid Position/Force Control for Multiple Robot Manipulators Handling One Common Object, Int. J. Robotics Res., Vol.12, No.3, pp.219-230, 1993 (多指ハンドなどに見られるような,複数台のロボットが共通の対象物を把持し操る場合に対して,協調動的ハイブリッド制御法を提案した論文)

[4] T.Yoshikawa, K.Harada, and A.Matsumoto: Hybrid Position/Force Control of Flexible-Macro/Rigid-Micro Manipulator System, IEEE Trans. Robotics and Automation, Vol.12, No.4, pp.633-640, 1996 (フレキシブルアームの先端に小さな剛体アームを取り付けたマクロ-マイクロシステムの手先で位置と力の制御が必要な作業を行う場合に対して,動的ハイブリッド制御法の適用を提案した論文)

[5] T.Yoshikawa: Force Control of Robot Manipulators, Proc. 2000 IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation, pp.220-226, 2000 (ロボットの力制御に関するサーベイ。インピーダンス制御とハイブリッド制御の大局的な位置づけを試みると共に,最近の力制御の研究動向を概観している)

[6] T.Yoshikawa: Foundations of Robotics, Analysis and Control, The MIT Press, Cambridge, Massachusetts, pp.227-240, 1990 (動的ハイブリッド制御について明確な定式化を行っている教科書)