日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1988Manipulation〈マニピュレーション〉フレキシブルロボットアームの可補償性
姜 兆慧 | 東北大学 |
内山 勝 | 東北大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
本論文では,フレキシブルロボットアームのエンドエフェクタの位置,姿勢とそれに直接影響を及ぼすジョイント変位とリンク弾性変位との間の写像関係を解析し,アームの作業特性を分析している。
まず,フレキシブルロボットアームのエンドエフェクタの運動に対するジョイント変位とリンク弾性変位の影響を解析し,リンク弾性変位によって生じるエンドエフェクタの位置,姿勢誤差をジョイント変位により補償する問題に対して,可補償性という新しい概念を提案している。
つぎに,補償の容易さを評価する指標として可補償度という概念を導入し,さらに可補償性の概念を用い,フレキシブルロボットアームの可操作性を論じている。可操作性の議論では,フレキシブルロボットアームの作業特性がリンク弾性変位の存在により,剛体ロボットアームの作業特性に比べて低下することを示している。
可補償性は,フレキシブルロボットアームの逆運動学など,機構特性を解明するうえで,ひとつ手がかりを与える概念として重要である。
関連研究論文として,[1], [2], [3]がある。[1]では,フレキシブルロボットアームの弾性変形によって生じるエンドエフェクタの位置決め誤差をジョイント変位により補償する制御手法を提案している。そして,その収束性を論じ,静的条件下での収束条件を与え,さらに,2リンクフレキシブルアームを用いた実験結果を示している。
関連研究論文[2], [3]では,フレキシブルロボットアームの可制御性を論じている。リンク弾性変位に起因する動的問題として,振動問題がある。[3]では,この可制御性について解析し,ロボットアームの姿勢によっては,この振動が不可制御となることを示している。[2]では,2リンク3自由度の空間フレキシブルアームに対して,この不可制御姿勢の分布を計算している。
1990年 第4回日本ロボット学会論文賞受賞