SEARCH
MENU

日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1994Manipulation〈マニピュレーション〉理想的な筋運動感覚を与えるマスタ・スレーブマニピュレータのバイラテラル制御


横小路 泰義京都大学
吉川 恒夫京都大学

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

マスタ・スレーブ型の遠隔操縦システムの理想状態とは,「操縦者があたかも遠隔地にいるかのような感覚でマスタアームを操作し作業を実行できること」であるが,数学的には明確でなかった.本研究ではこの理想状態を明確に定義し,その理想状態を実現する具体的なバイラテラル制御方策を提案した.本研究の成果をまとめると以下のようになる.

  1. マスタ・スレーブシステムの理想状態とは,位置の応答と力の応答それぞれがマスタとスレーブ間で一致することであると明確に示されたこと.
  2. 理想応答を実現するための条件を導出し,理想状態の実現のためには,位置,速度,力の信号だけでなく加速度の信号も必要であることが示されたこと.
  3. 実際のシステムがどれだけ理想状態に近いかという観点から,システムの性能を定量的に評価する指標を提案したこと.
  4. 理想応答を実現するバイラテラル制御法を提案し,実際に実験で有効性を確認したこと.

この研究は,1自由度システムを対象としているが,後に多自由度系にも拡張されている[3][7].マスタ・スレーブシステムの操作性を悪化させる要因は,遠隔地の環境と操縦者との間に介在するマスタ・スレーブ両アームと制御系のダイナミクスの存在であり,このダイナミクスをセンサーフィードバックにより適当に整形することにより,操作性を向上させることができる.操縦者と遠隔地の間に存在する適当に整形されたダイナミクスを介在インピーダンスと呼ぶ.このように操作性向上のためにアームのダイナミクスに着目する観点は,マスタアームの設計指針にも適用されている[2][5][8].

図1 点灯LED上への位置合わせ(Task 1)
図1 点灯LED上への位置合わせ(Task 1)
図2 固定アルミ板への押し付け(Task 2)
図2 固定アルミ板への押し付け(Task 2)
図3 スポンジへの押し付け(Task 3)
図3 スポンジへの押し付け(Task 3)
図4 アニメーション表示
図4 アニメーション表示