日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2005Manipulation〈マニピュレーション〉ロボットハンドのための負荷感応無段変速機
高木 健 | 東京工業大学 |
小俣 透 | 東京工業大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
ロボットハンドの駆動系には,指の開閉時は速度が要求され,把持後は力が要求される.減速比において力と速度はトレードオフの関係にあることより,二つの要求を共に満たすことは困難とされてきた.
指の開閉時には減速比を小さくし高速で動かし,力を必要とするときは減速比を大きくすることができれば,上記の要求を満たすことができる.しかしクラッチ等により一度出力を切り変速しては,把持した物体を落としてしまう.よって,出力を遮断しない無段変速機が理想的である.
自動車用の無段変速機は実用化に至っている.もちろん,ロボット関節に搭載するには重量,スペース的に不可能である.小型軽量かつ変速のためのアクチュエータを必要としない負荷感応型のロボット用無段変速機が報告されているが,これらも指に使用できるほど小型軽量ではない.
現存するほとんどの無段変速機の出力は360度の回転運動をする.しかし,ロボットハンド等のロボットの関節は360度回転する必要がない.この事実に着目し特定の可動範囲に特化すれば,機構を大幅に簡単化できることを示した.すなわち,五つのリンクとねじりコイルばねから構成される小型軽量な無段変速機を開発した.
開発した無段変速機の性能評価実験を行い,減速比を1.6から最大3.3倍増加できることを検証した.無負荷時には約2倍増速するように設計したので,それを含めれば約3倍から最大6 倍以上減速比を変化できることを確認した.この変速機を用いて1自由度の指を2本持つグリッパを製作し,力強い把持と俊敏な動きを実証した.一定の減速比ではこの二つの動作を満たせないことを示した.
2006年 第20回日本ロボット学会学会誌論文賞受賞