日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2009Manipulation〈マニピュレーション〉低バックラッシュ立体カム機構を用いたロボットハンドの開発-軽量ロボットハンドの試作と関節機構の評価-
安沢 孝太 | 福島大学 |
佐々木 裕之 | 鶴岡工業高等専門学校 |
鄭 聖熹 | 大阪電気通信大学 |
高橋 隆行 | 福島大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
人間共存環境の中で様々な対人サービスの提供を目的とする人間支援ロボットの研究が盛んに行われている.このようなロボットは,たとえば重量物の運搬や細かい物のハンドリング,ジェスチャーなど様々なタスクの実行を目的としている.そこで,これらのタスクを効率的に実行できるアームならびにエンドエフェクタとしてのハンドが必要不可欠である.多指多関節ロボットハンドは,2 本指グリッパなどでは実行が困難な複雑な動作を要する作業を実行することができ,人間支援ロボットのエンドエフェクタとして適している.
人間支援ロボットに装着される多指多関節ロボットハンドに要求される条件としては,人間の生活空間で日常的に行われる様々な作業が実行できる多機能性を有すること,対人安全性を十分に考慮した設計になっていること,が挙げられる.多機能性を実現するためには,複雑で多様な作業が実行できる十分な自由度およびパワーを有し,さらに,制御安定性の確保や精密な作業を実行するために高精度な関節機構を有する必要がある.安全性に関しては,人間との接触時に直接的な危険源となるマニピュレータのパワーを小さくするために,その先端に装着されるハンドの重量を可能な限り軽くする必要がある.
これまで,多くの多指多関節ロボットハンドが研究・開発されており,それぞれ目的とする機能を実現するために特有のメカニズムを採用している.しかし,先行開発された多くのハンドが自由度またはパワーに関しては十分であるが,ハンドを構成する構造材の軽量化,指関節機構の高精度化に関しては多くの課題を残している.そこで、本研究では,これらの課題を解決すべく,小型で高精度な特性を有する立体カム機構を用いた関節機構を提案し,開発した関節機構および軽量構造材を用いた軽量で高精度特性を有する人型ロボットハンドの試作と評価を実施した.
2011年 第25回日本ロボット学会学会誌論文賞受賞