日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2012Manipulation〈マニピュレーション〉ばね-リンク機構を用いた外殻型2自由度屈曲マニピュレータの開発
荒田純平 | 名古屋工業大学(現:九州大学) |
齊藤善崇 | 名古屋工業大学 |
藤本英雄 | 名古屋工業大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
手術支援マニピュレータの駆動手法として,これまでに様々な機構が提案されており,代表的な例として,ワイヤ機構,リンク機構,歯車機構,形状記憶合金を用いた機構等がある.ワイヤ機構は多自由度の駆動力伝達において,細径化に有利であるが,ワイヤの伸びや破断という問題がある.またリンク機構は,剛体リンクを使用することで高い剛性,耐久性を実現できるが,部品数が多くなり,関節部でのガタの累積が生ずるという問題がある.また,この他に歯車機構,形状記憶合金を用いた機構等が挙げられるが,歯車機構はバックラッシュによるガタの影響が大きく,形状記憶合金は他の機構と比較して動作速度と出力に劣る問題がある.そこで本研究では,これまでに挙げた従来の機構とは異なる特徴を有するばね−リンク機構を用いた外殻型2自由度屈曲マニピュレータについて提案した.
開発したマニピュレータの最も大きな特徴は,ばねの変形による動力伝達・変換機構を内包する点である.ばね−リンク機構は,板ばねと剛体リンクを受動関節により連結した構造を有する.ばね−リンク機構は,本機構のばね先端をロボットエンドエフェクタ等の構造物に固定したと仮定したとき,リンクの長手方向についての動作は,ばねの作用により屈曲方向へ動作変換できる.本研究で提案したマニピュレータは,その外周上90°等分に4つのばね−リンク機構を配置し,向かい合わせのばね−リンク機構2対により屈曲2自由度を実現する.
本マニピュレータでは,駆動機構はマニピュレータの外周に配置されるため,内部に様々な医療機器を搭載する空間を有する.また,複数のばねの変形による拮抗による効果により,高剛性・高精度を実現した.さらに,ばねを用いた機構は従来機構と比較して部品点数を少なくできるため,製造コストに優位性があり,かつ構造的に滅菌・消毒に有利である.
2012年 第26回日本ロボット学会論文賞受賞
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