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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1981Sensing〈センシング〉位相情報に注目した光学式近接センサ


増田 良介東京工業大学
長谷川 健介東京工業大学
佐々 修一航空宇宙技術研究所

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

反射光の変調位相情報を用いて,対象物体の反射率に影響されずに距離と傾きを同時に測定することのできる,光学式近接覚センサを開発した。この近接覚センサの基本原理は,受光素子に対して非対称の位置においた発光素子を90度位相のずれた信号で変調発光すると,受光信号の位相ずれが対象面までの距離の関数になることを利用したものである。また,対称の位置においた発光素子を同様に変調発光すると,対象面の傾きによって受光信号の位相が変化するので,傾きも測定可能となる。本センサの特徴は次の通りである。
  1. 構造が簡単であり,信号処理も容易である。
  2. 対象面が乱反射特性をもてば,その材質や反射率には影響されない。
  3. 間隔距離と相対傾きを同時に測定できる。
このセンサの形態として,6個の発光素子を受光素子に対して十字配置した基本形式(写真1),発光素子と受光素子で単位センサを構成し任意の形態に配置するモジュール形式(写真2)や,ロボットハンドの先端に素子を配置する分離形式(写真3)などが構成された(論文[1])。これらを応用して,近接覚情報によるロボットマニピュレータの3次元の曲面トレース制御(写真4,論文[2]),近接覚センサの分布配置による障害物回避制御(写真5,論文[3])などが実現された。

1983年度 計測自動制御学会論文賞受賞

写真1 近接覚センサの基本形
写真1 近接覚センサの基本形
写真2 モジュール型近接覚センサ
写真2 モジュール型近接覚センサ
写真3 近接覚センサハンド
写真3 近接覚センサハンド
写真4 近接覚トレース制御
写真4 近接覚トレース制御
写真5 近接覚による障害物回避
写真5 近接覚による障害物回避
 

対応論文


増田,佐々,長谷川:位相情報に注目した光学式近接覚センサ

計測自動制御学会論文集,第17巻,第9号,pp. 945-950, 1981
(リンク先:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicetr1965/17/9/17_9_945/_pdf)

関連論文


[1] R. Masuda: Multi-functional Optical Proximity Sensor by using Phase Information, pp169-176, '85 ICAR (1985)

[2] 増田: 変調位相情報に注目した光学式近接覚センサの応用,東海大学紀要工学部,Vol.26, No.1, pp1-8 (1986)

[3] T. Tsuchiya and R. Masuda: Allocation of Proximity Sensors for Obstacle Detection of a Robot Manipulator, Journal of Robotics and mechatronics Vol.9 No.6 pp482-489, (1997)