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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1987Sensing〈センシング〉特異値分解によるロボット力覚センサの構造評価


内山 勝東北大学
中村 吉宏東北大学
箱守 京次郎東北大学

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

力覚センサでは,一般に,加えられた力,モーメントを構造体の弾性歪に変換し,この弾性歪を計測することにより,力,モーメントを計測する。したがって,その設計では,この構造体をいかに設計するかが,重要なポイントとなる。また,力,モーメントの計測精度も考慮すべき点である。本論文では,この計測精度に着目しつつ,センサ構造体の性能評価を行う方法について論じている。

まず,力覚センサにおける力,モーメントの計測原理について考察し,これを理解するための枠組みを与えている。すなわち,加えられた力,モーメントとセンサ構造体に発生する歪との関係を力-歪変換行列により線形に表現し,歪を計測し,力,モーメントを算出する過程を力-歪変換行列の逆行列を計算する過程として定式化している。

つぎに,この枠組みを踏まえ,センサにおける力,モーメントの計測誤差に着目しつつ,センサ構造体の評価指標を導いている。この誘導では,数値解析の分野における特異値分解の手法を用い,センサ構造体の特性を解析し,力-歪変換行列の条件数がひとつの評価指標となることを示している。本指標は,歪の計測誤差に起因する力,モーメントの算出誤差を出来るだけ低く抑えるという観点から,センサ構造体の評価を行うもので,力覚センサの設計,特性改善において,ひとつの重要な指針を与える。

論文では,試作したいくつかの力覚センサについて,本評価指標に基づき,評価,解析,および比較を行い,本指標の有効性を検証している。

関連研究論文として[1], [2]がある。[1]では,この評価指標に基づく力覚センサの設計を,有限要素法解析とキャリブレーション実験の組み合せにより組織的に行うことを提案している。キャリブレーション実験では,行列演算に基づく組織的なデータ処理手法を提案している。関連研究論文[2]では,センサ構造体の汎用的な機構モデルを提案し,本評価指標による機構パラメータの最適化を論じている。

1988年 第2回日本ロボット学会論文賞受賞