日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2007Sensing〈センシング〉高速ビジョンによる運動/変形物体のリアルタイム3次元センシング
渡辺 義浩 | 東京大学 |
小室 孝 | 埼玉大学 |
石川 正俊 | 東京大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
高速ビジョンは、高速なイメージングと高速な画像処理の両者を実現するセンシングシステムであり、より高速で複雑なタスクを達成するロボットの実現において不可欠の技術である。本研究開発では、1,000個の対象物の認識・追跡を1秒間に1,000フレームの速度で実現する高速ビジョンを新たに構築し、対象物が高速に運動/変形している状況下でも、リアルタイムに3次元情報を取得し得るセンシングシステムを提案・実証した。これまでの3次元センシングの主流は静止した石膏製の小型物体や、屋内環境の構造、人間の顔などであり、その多くは高速性を要請していなかった。このような従来技術に対して、本技術は、運動/変形する物体を捉えるとともに、そのセンシング速度も高速画像処理技術によって大幅に向上している。このようなリアルタイム3次元センシングは、画像センシングにおける機能と性能の面から特徴的な技術であると考えられる。
本技術の運動物体への対応と数十倍の速度向上がもたらす3次元センシングのインパクトは、従来の応用を性能強化するようなものだけに留まらず、真に新しい応用を切り拓くことができる。この構想のもと、次々と応用システムが打ち出されている。例えば、高速3次元センシングに基づいた映像制御によって、変形可能なスクリーン上で自由で直感的な3次元操作を実現するメディアシステム技術Deformable Workspaceが提案・実証された。この他にも、書籍のめくり動作中にすべての情報を取り込む超高速書籍電子化技術Book Flipping Scanningが提案された。いずれも、各分野において強力なアプリケーションとなっており、リアルタイム3次元センシングがもたらした影響は大きい。
第22回(2008年度)日本ロボット学会論文賞受賞