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RoboCup世界大会レスキュー実機リーグ優勝


松野文俊(京都大学工学研究科 機械理工学専攻 教授)

竹森達也(松野研究室博士後期課程2年、チームリーダー)

 

 2019年7月4日~7日にかけてオーストラリアのシドニーで行われたRoboCup世界大会のレスキュー実機リーグにおいて、京都大学松野研究室の学生からなるレスキューロボット開発・運用チームであるSHINOBIが総合優勝しました。当チームとしては念願の初優勝、日本のチームとしては2005年以来14年ぶりの優勝という快挙になります。今回は東北大学多田隈研究室の学生との合同チームを結成しました。

 

 RoboCupは1997年から開催されている世界最大規模の伝統ある国際ロボット競技会です。世界各国から多くの研究チームやロボットエンジニアが参加しており、サッカー、レスキュー、@ホームという3つのリーグを通して実践的な研究開発が行われています。今回我々が参加した「レスキュー実機リーグ」では、災害現場を模したフィールドを用いてロボットの遠隔操作性能、不整地の走破性能、アームによる作業性能、マッピングや自動走行による自律探索性能など、災害対応ロボットに求められる多様な性能を総合的に評価します。

 

 我々は昨年10月に行われたWorld Robot Summitのインフラ・災害対応カテゴリの災害対応標準性能評価チャレンジで優勝した機体をさらに改良し、新たに製作したレスキューロボットFUHGA2で挑みました。アーム先端には東北大学の多田隈建二郎准教授チームが開発した特殊なジャミング平行グリッパを搭載しています。従来機に比べて走破性能が大幅に向上し、またセンサの充実とともに自律探索機能を実装するなど進化を遂げています。

 

 予選では4カテゴリに分かれた計20種の課題から各チーム得意なものを選択して取り組みます。3日間かけて18回もの試技を行い、各チーム成績の良かった10種分の得点で決勝進出チームが決まります。我々は接戦の末に2位で決勝に進出、また予選結果から作業性能に関する部門賞であるBest in Class Dexterity賞を受賞しました。7日に行われた決勝戦では予選の得点はクリアされ、6チームが新たに走破性能、作業性能、自律性能をそれぞれ評価する三つの種目に各40分ずつ取り組みました。予選を1位通過した優勝常連チームであるタイのIrap Sechzigとは走破性能と作業性能の合計スコアでは200点中198点対197点と、我々のチームが1点だけ上回る互角の戦いになりました。しかしながら、3つ目の自律性能において、決勝に備えて事前に準備してきた自律探索機能が功を奏して17点差をつけました。3位だったドイツのHector Darmstadtは自律性能に特化したチームで、優れた自律探索を実現。我々は自律性能では及ばなかったものの、他の2カテゴリで圧倒して点差を広げました。チームSHINOBIはレスキューロボットに求められる全ての機能を妥協無く充実させ、その総合力の高さを発揮して優勝を掴み取ることができました。地元のTVの生中継にも我々のロボットが取り上げられ、注目を集めることができたようです。

 

 実は,SHINOBIの海外遠征は、2009年以降予算不足できていませんでした。今回は、World Robot Summit2018での優勝賞金を使わせていただき、10年ぶりの海外開催のRoboCup世界大会に参加ができ、優勝に繋げることができました。関係の皆様に厚く御礼申し上げます。

 

 今後とも、社会で役立つレスキューロボットを実現すべく、研究室一丸となって研究開発に励みたいと思います。