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RSJ2019学生講演レポート[3M1:医療ロボット(1/3)]


執筆日 2019年9月13日

執筆者 菅宮友莉奈

 

 2019年9月3日から7日にかけて早稲田大学で開催された日本ロボット学会第37回学術講演会のセッション参加レポートをお届けします.

 今回のレポートはセッション最終日の9月6日午前中に行われた医療ロボット(1/3)です.こちらのセッションには知り合いが数名いるのですが,偏らないでレポートするよう頑張ります!

 医療ロボットのセッションですが,ここ数年ですごく投稿件数が増えている気がします.5年くらい前も医療ロボットセッションで発表させていただいたのですが,当時は学会全体で1セッションでした.今回は3セッションあり,他にも介護などのセッションもあるため,本当に増えているんだなぁと感じます.部屋の雰囲気ですが,前日が懇親会と言うこともあり「昨日はどうも!」といった挨拶をしている方多い印象でした.でも,懇親会の翌日の朝一セッションなので少々疲労感もあるでしょうか.

 

部屋の様子

 

 早速1件目から発表の紹介をしていこうと思います.横浜国立大学の相良先生による「大型臓器への手術操作を支援する5指ハンドのための外骨格型入力インターフェースの開発」です.HALSというお腹の中に手を入れて行う手術用のロボットハンドの開発に関する発表でした.お腹の中に手を入れて臓器を握ったりつかみあげたりということを行います.手術跡を小さくするための器具が多く開発される中では珍しいですが,特に大型臓器を対象とする時にHALSの様につかむという動作も必要のようです.中でも,直感的に操作ができる手術用のロボットハンドを開発しており,ワイヤを引っ張ることによって動かす方法です.重さは201g.実験方法はプラスチックボックスの中に10mm角の立方体を入れて移動させるという実験をしていました.

 2件目は山形大学の日野先生による「ラットの脳の侵襲計測に用いる多自由度ステージの設計」です.こちらは少々映像が衝撃的でした.脳内の目的の位置へ光ファイバーを差し込むために高い精度のステージ(土台)の設計についての発表で,ラットがステージに固定された写真が出て参りました.

 

ラット

 

 3件目は九州大学の大澤先生による「柔軟パドルを用いた腸管自走ロボットの開発」です.こちらは大腸がんの検査などに用いる大腸内視鏡検査用の腸管自走ロボットの研究です.柔軟パドルを駆動方法としてエリマキトカゲの足のようにバタバタ動いていました.足が柔らかい材料なので,粘膜の巻き込みなどが防止されたとのことです.今後は直径3mm程度の内視鏡カメラの搭載を予定しているそうです.

 こちらの発表では非常に質問が多く,人体の腸に関する質問が目立ちました.実際の腸はぬれていると思うが影響はどうなるか,実際の腸の湾曲の影響はどのぐらいかなど,人体のモデリングについて活発に意見交換されていました.

 続いて,4件目は九州大学の瀬戸先生による「医療ロボットへの導入を目指した帯状弾性体を用いた可変剛性機構の開発」です.人間は一つの関節でも複数の剛性を持つことがあるそうです.例えば,小さな文字を書くときと大雑把にものを持つときでは緊張と緩和を使い分け,思いがけない衝突の衝撃を和らげています.そこで,この研究では,剛性を可変にする機構の開発を行っていました.

 5件目は早稲田大学の小川先生による「新生児蘇生法トレーニング・システムの開発」です.生まれたばかりの赤ちゃんは医師による蘇生が必要となることが多いそうです.そこで,医師が蘇生方法のトレーニングを行うためのトレーニング用ロボットシミュレータの開発でした.赤ちゃんの呼吸がうまくいかないときに起こる「陥没呼吸」の再現を行っていました.現状では十分に陥没呼吸の定量化が行われていないのですが,紙粘土を使ってアンケートを行うことで,陥没呼吸の定量化を行っていました.

 6件目は早稲田大学の大橋先生による「外科手術用ロボットハンドシステムの開発」です.1件目と同様HALSの際に用いるロボットハンドの開発です.直感的な操作を行うためのフィードバックシステムで,指の腹をシートで持ち上げることによってフィードバックを行っていました.どのぐらいの堅さのものが見分けられる(さわり分けられる)のですか?という質問があり,腕の皮膚と唇を判別可能なぐらいの分解能だそうです.どちらも柔らかいですね!

 最後に関西大学の今井先生による「臓器把持のための接触時に吸引する手術器具の開発」です.心臓が拍動している中で行う手術もあるそうです.そこで,心臓の心拍を押さえるために8つの吸盤が一セットになった器具で心臓に吸着して変形を抑えるそうです.しかし,その術中に一つの吸盤が外れてしまうと吸引ポンプの内圧が変化して,他の吸盤も外れてしまいます.そこで,一つの吸盤が外れても他の吸盤が外れないような手術器具の開発を行いました.

 以上でセッションが終了したのですが,先生方のディスカッションが非常に活発で,セッション後も白熱しておりました.一枚写真を撮らせていただきました.HALSについてのお話しが白熱している様子でした.9月6日午後のセッションでも度々その名前が出たので,気になる方はそちらもチェックしてください.

 

 

セッション後ディスカッション

 

以上で,「3M1_医療ロボット(1/3)」のセッションレポートを終わります.

この他、以下のセッションについてもレポートしておりますので是非ご覧ください.

1N1_OS17:ヒューマン・サポート・ロボティクス(1/2)

1N3_OS10:優しい介護「ユマニチュード」とロボティックス

2F2_OS6:人と関わり合うロボットのためのSocialware(1/3)

3M2:医療ロボット(2/3)

 

 

【講演プログラム】

3M1_医療ロボット(1/3)

3M1-01  大型臓器への手術操作を支援する5指ハンドのための外骨格型入力インターフェースの開発

○相良 雄斗(横浜国立大学),安齋 祐貴(横浜国立大学),加藤 龍(横浜国立大学),向井 正哉(東海大学)

3M1-02  ラットの脳の侵襲計測に用いる多自由度ステージの設計

○日野 克俊(山形大),川口 敏史(山形大),佐藤 学(山形大),井上 健司(山形大)

3M1-03  柔軟パドルを用いた腸管自走ロボットの開発

○大澤 啓介(九州大学),中楯 龍(九州大学),荒田 純平(九州大学),赤星 朋比古(九州大学),

江藤 正俊(九州大学),橋爪 誠(北九州中央病院)

3M1-04  医療ロボットへの導入を目指した帯状弾性体を用いた可変剛性機構の開発

○瀬戸 謙一郎(九大),木口 量夫(九大),荒田 純平(九大)

3M1-05  新生児蘇生法トレーニング・システムの開発

○小川 駿也(早稲田大学大学院),菅宮 友莉奈(早稲田大学大学院),武部 康隆(早稲田大学大学院),

今村 健人(早稲田大学大学院),川崎 智佑喜(早稲田大学大学院),片山 保(株式会社京都科学),

中江 悠介(株式会社京都科学),高西 淳夫(早大理工・ヒューマノイド研究所),石井 裕之(早大理工・ヒューマノイド研究所)

3M1-06  外科手術用ロボットハンドシステムの開発

○大橋 嵩志(早大),加藤 健太郎(早大),オマル アイマン(早大),高西 淳夫(早大・早稲田大学ヒューマノイド研究所)

3M1-07  臓器把持のための接触時に吸引する手術器具の開発

○今井 健太(関西大),高橋 智一(関西大),鈴木 昌人(関西大),青柳 誠司(関西大)

 

 

関連サイト:ROBO-HALSホームページ