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みのつぶ短信第12回「サイエンスジャーナル主催の国際会議」


 昨年の4月に長年コラボしている米国ワシントン大学の発達心理で著名なAndy Meltzoff教授からメールがとどいた.新生児模倣といえばわかるだろうか?生まれたての赤ん坊が親の顔の表情を真似するやつだ.どの程度かの議論はつきないが,ともかく有名だ.で,彼から,サイエンスジャーナルを発刊しているThe American Association for the Advancement of Science, AAASが主催するAnnual Meeingが2020年2月にシアトルで開催されるとのことで,彼が組織委員の一員で,シンポジウムを開催するので,講演を依頼された.正確にいうと,非常に多くの科学シンポジウムが同時並行で開催され,90分枠のシンポジウムで3人のスピーカーが講演する形態だ.一人30分トークかと思いきや,20分足らずで,残りパネル討論だった.急な締切だったが,承諾した.トピックは触覚で,セッションタイトルは「Communication Through Touch: From Babies to Social Robots」である.Andyは「What the Infant's Body Tells the Infant's Brain: Touch and the Origins of Empathy」とうタイトルで,触覚を通じた養育者と赤ちゃんの相互作用が共感能力にどのように影響するかを調べた研究で,特に興味あるのは,生後数ヶ月の赤ちゃんが自身の触覚体験と他者の同様の経験の観察時に脳の同じ領域が活性化することで,いわゆるミラーニューロン的な働きだが,これが共感のはじまりという研究紹介だった.二番目は,イスラエルのRuth Feldman教授で,彼女も同様に母子間触覚相互作用の重要性を指摘し,20年に渡る研究で大脳皮質の活性経路,情動処理領野,大人の社会性に関する領野での差異を示した.浅田自身は人工痛覚を通じたロボットの共感能力に関する話題提供を行った.このシンポジウムに前に,メディア向けの事前概要説明, そして翌日,WEBでのライブストリーミングによる報告のセッションとかなりもてはやされた.浅田自身は他の多くの興味あるセッションやシンポジウムに参加した.その時,シアトルで一人感染者(中国人)が報告され,米国内でそれほどシリアスでなかったが,COVID-19の遺伝子解析報告や地元マイクロソフトのBill Gate氏の特別講演などに加え,特に面白かったのは,盲で聾の人たちのためのコミュニケーション手段として触覚を用いた言語に関する報告で,セントルイス大学のTerra Edward博士,Jenna Gorlewicz博士,シカゴ大学のDiane Brentari教授の3人の女性研究者だ.最初にDianeが触覚言語のポテンシャルや経過を報告した.触感の違いやタッチ動作の多様性を活かして,言語表現するが,面白いことは,通常の言語表現から触覚言語への変換は任意性がありつつも,ある意味でのユニバーサリティ,例えば,周波数の高低に対応する表面のザラつき(高いと細かく,低いとさらっと)などの共感覚的な部分を利用していることである.Terraは,実際のコミュニティでの実証実験結果を,そしてJennaは,遠隔コミュニケーションを実現するデバイスなどを報告した.シンポジウム後,彼女達に聾唖幼児の場合に,言語未習得で困難ではと質問したら,実際に教えてるケースがあり,うまく言ってるとのこと.先の共感覚な部分が効いているのではと察した.この他にも興味あるシンポジウムやパネルがあったが,別項に譲る.

日本ロボット学会
会長 浅田 稔

 

 

触覚言語セッションの3人の女性スピーカー

 

 

触覚言語コミュニケーションの一例(タイトルスライド)

 

 

Bill Gates氏の特別講演

 

 

我々のセッションのBriefing前の3人の写真

 

 

Debriefing後のAndyとのツーショット