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学生編集委員会企画:第38回日本ロボット学会学術講演会レポート(一般セッション:ヒューマンインタラクション(2/2))


執筆日 2020年12月1日
東京大学 工学系研究科 修士1年 小嶋 麻由佳

 

 2020年10月9日から11日にかけてオンライン開催された日本ロボット学会第38回学術講演会のセッション参加レポートをお届けします.ロボット学会初のオンライン開催ということで,直接先生方にお会いできなかったのは残念でしたが,スライド等はむしろ見やすく,快適でした.

 

 今回レポートするのは,セッション2日目,10月10日の午後に開かれた「ヒューマンインタラクション(2/2)」というセッションです.最先端のヒューマンインタラクションに関する研究発表が2セッションに跨って12件行われました.今回は,その中でも2セッション目の5件についてレポートします.全体的にロボットによるヒトとのコミュニケーションやヒトの支援に関する研究が多く,興味深く聞かせていただきました.

 

 順番にプログラムを紹介します.
 1件目は国際電気通信基礎技術研究所のグループによる「ユーザと触れ合い体験を共有する着用型エージェントの開発」です.主観的体験を共有することができる着用型ロボットを開発しています.試作システムでは,接触に応じて服型エージェントが14種類もの反応を返すそうです.少し古いですが,「ど根性ガエル」のような発想でとても面白く思いました.また,接触反応に応じてロボットが音声反応を返すことによって,自分を叩いてもあまり痛くなく感じるというのは非常に興味深く感じました.

 

着用型エージェントの概要.(予稿原稿[1]より転載)

 

 2件目は,奈良先端科学技術大学院大学と京都大学のグループによる「より良い聞き手のためのアンドロイドによる瞬目と頷きの模倣効果の検討」です.顔情報を読み取ることで相手の頷きと瞬きを検出し,その動きとアンドロイドの動きを同期させたりすることでその効果を検討していました.結果,瞬きを3秒間隔で行いつつ,頷きもさせることで印象が良くなることが明らかになったそうです.聞き上手なアンドロイドが開発できたら,高齢者など幅広い需要がありそうだと思いました.

 

実験の様子.(予稿原稿[2]より転載)

 

 3件目は,理化学研究所と東京農工大学のグループによる「見守り声掛けロボットに対する高齢者による応答と印象評価」です.介護を必要としない高齢者の生活リズム整調を目的としたシナリオ対話型ロボットを開発されました.ロボットがとてもかわいかったです.今後は,より返答しやすい声かけになるように調整し,健康状態の推定を目指されるそうです.どういう声かけが返答しやすいか,というのは個人差もありそうで大変そうだと思いました.

 


見守り声かけロボットを用いた実験の様子.(予稿原稿[3]より転載)

 

 4件目は,大阪大学と電気通信大学のグループによる「遠隔保育ロボットを用いたToddler層乳幼児の言語発達支援システムの提案」です.遠隔保育ロボットを用いた言語発達支援システムを提案していました.乳幼児は集中を持続させることが難しいらしいのですが,ロボット動作を生かすことで,乳幼児の集中を持続させることができるらしいです.また,このロボットで言語クイズ遊びを実施することで,自動的かつ定量的に乳幼児の言語発達を調査,支援できるらしいです.育児の負担を減らした上で教育もできるなんで一石二鳥で素晴らしいですね.

 

遠隔保育ロボットを用いた実験の様子.(予稿原稿[4]より転載)

 

 5件目は,大阪大学のグループによる「商業施設における商品推薦ロボットの実体性の効果の検証」です.フードコートで商品を推薦するロボットシステムを検証されていました.この商品推薦システムでは,被験者の気分,選好とその理由などを何度か聞いて推薦する食べ物を決め,被験者に推薦するらしいです.ロボットを用いた場合とCGを用いた場合の2条件を比較したところ,ロボットの方が推薦内容への納得感が高かったらしく,興味深く思いました.また,推薦の過程において,ロボット2体が対話しながら被験者と会話するらしいのですが,その点も新鮮で面白く感じました.このような複数人でテンポよく喋りながら推薦したのが納得感を高めたのかなと思いました.

 

商業施設における実験の様子.(予稿原稿[5]より転載)

 

 以上で「ヒューマンインタラクション(2/2)」のセッションレポートを終わります.どの発表もとても興味深く,聞いていて楽しかったです.この他にも,「視覚・触覚に基づくロボットマニピュレーション」「確率ロボティクスとデータ工学ロボティクス~認識・行動学習・記号創発~(3/5)」「ヒューマン・マシン・インターフェース」のセッションについてもレポートしていますので,そちらも是非御覧ください.

 

【講演プログラム】
2I2_GS09:ヒューマンインタラクション(2/2)
[1] 2I2-01 ユーザと触れ合い体験を共有する着用型エージェントの開発
○住岡 英信(国際電気通信基礎技術研究所),港 隆史(国際電気通信基礎技術研究所),塩見 昌裕(国際電気通信基礎技術研究所)
[2] 2I2-02 より良い聞き手のためのアンドロイドによる瞬目と頷きの模倣効果の検討
○湯口 彰重(奈良先端科学技術大学院大学),Gustavo Alfonso Garcia Ricardez(奈良先端科学技術大学院大学),高松 淳(奈良先端科学技術大学院大学),中澤 篤志(京都大学),小笠原 司(奈良先端科学技術大学院大学)
[3] 2I2-03 見守り声かけロボットに対する高齢者による応答と印象評価
○熊谷 和実(理化学研究所・東京農工大学),徳永 清輝(理化学研究所),三宅 徳久(理化学研究所),田村 和弘(理化学研究所),水内 郁夫(東京農工大学),大武 美保子(理化学研究所)
[4] 2I2-04 遠隔保育ロボットを用いたToddler層乳幼児の言語発達支援システムの提案
○三木 晴子(大阪大学),阿部 香澄(電気通信大学),堀井 隆斗(大阪大学),長井 隆行(大阪大学・電気通信大学)
[5] 2I2-05 商業施設における商品推薦ロボットの実体性の効果の検証
○酒井 和紀(大阪大学),中村 泰(大阪大学),吉川 雄一郎(大阪大学),石黒 浩(大阪大学)