SEARCH
MENU

みのつぶ短信第28回「ロボカップ2022の衝撃」


左から写真1,写真2,写真3

 

 ロボカップ2022バンコク大会[1]が2022年7月13日から17日まで,バンコクのBITEC(Bangkok International Trade & Exhibition Center)で開催された(写真1〜3).最終日の17日はシンポジウムで,これまでは競技会会場とは別の大学等の会場(会場費が高くつくので)で開催されていたが,今回は競技会の会場で開催され,参加者にとっては,アクセスが同じで楽であった.筆者は会場から4駅目の地上鉄のホテルから毎朝通った.


 2020年は開催されず,2021年は一部現地ではあったものの,ほとんどオンラインでの大会であったので,対面での大会(一部オンライン参加)は,3年ぶりということで,参加者の思いは,開催できたことの喜びが溢れていた.新型コロナの影響が完全に消えたわけではなく,一部の参加者は発熱などにより,現地で感染したが,大会運営は非常に円滑であった.本来,2020年は,フランスボルドー,2021年はバンコクの予定であったが,2020年大会開催中止,2021年も従来の形式では開催できず,ボルドーは2023年に開催することで,2022年,タイ・バンコクにお願いすることになった.この間の事情の変動にも関わらず,きちんと対応してもらえたことは,大会実行委員長でバンコクにあるMohido大学のJackrit Suthakorn工学部長ら率いる現地委員会メンバーのおもてなし精神の賜物である.


 ロボカップの精神(RoboCup Spirit)の一つに,あらゆる境界の打破を謳っており,その一つに国境の壁を超えることを挙げている[2].オリンピック・パラリンピックなどの国際競技会が国と国との戦いを強調しているのに対し,ロボカップでは国の戦いではなく,国際的なチーム間の協調を奨励し,賞に値するのは国ではなく,チームメンバー一人ひとりであることを強調している.過去に優勝チームが国旗を掲げたことがあり,即刻禁止した.とはいいつつ,日本からのチームの活躍が気になるところで,その簡単な報告だけしておこう.

 

写真4

 

写真5


 サッカー部門の小型ヒューマノイドリーグでは,林原先生率いる千葉工大のCITブレインズが優勝した.筆者が優勝賞状と優勝杯を授けた(写真4).また,ロボカップレスキュー部門の実機リーグで松野先生が率いる京大の「SHINOBI」チームが優勝した(写真5).詳細報告は,両先生からあると期待します.

 

ビデオ1

 

 

写真6


 筆者が撮影したビデオから一つだけ紹介する(ビデオ1).中型リーグの常勝チームであるオランダ・アイントホーフェンのTechUnited Eindhovenとロボカップ国際委員会の理事たちとの人間とロボットの試合が毎回,エキシビジョンとして開催されており,ビデオの最後にロボットチームからのシュートを実行委員長のJackritが阻止しつつも,しきれずにオウンゴールとなってしまった瞬間である.3-2で理事チームがなんとか勝ったが,徐々にロボットチームに押されつつある.筆者は参加していないが,理事チームのヘッドコーチとして試合後のロボットも含めた全員集合写真に参加した(写真6).

 

写真7:メジャーリーグのバンケットでの盛り上がりの様子:手前自撮りは,ポルトガルのA. Fernando Ribeiroバイス・プレジデント,その後ろがオーストリアのGerald Steinbauer理事,その後ろが北大の野田五十樹 元・プレジデント,右が筆者,そしてシンガポールのChangjiu Zhouバイス・プレジデントの面々である.


 先にも述べたが,対面の大会は3年ぶりで,オンラインでは味わえない,質も量も異なる情報量爆発の大会で,実際の現地でのロボット駆動をはじめ,参加者間の対面コミュニケーションの喜びが多大で,その重要性を再認識した(写真7).

 

[1] https://2022.robocup.org
[2] Minoru Asada and Oskar von Stryk. Scientific and Technological Challenges in RoboCup. Annual Review of Control, Robotics, and Autonomous Systems, Vol.3, No.1, pp.441--471, 2020.

 

浅田稔

元会長,現在,大阪国際工科専門職大学 副学長,及び大阪大学先導的学際研究機構 共生知能システム研究センター特任教授