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活動報告2022:複雑高精度機械の組立技術研究専門委員会 


複雑高精度機械の組立技術研究専門委員会の活動の成果を第40回学術講演会オーガナイズドセッション(OS)において発表した。

名称 第40回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2022)
日時 2022年9月7日(水)
場所 東京大学本郷キャンパス(東京都文京区) I室(244) 311 312
OS名称 人・ロボット協調による『合業』型生産システム
OS番号 OS13
OS内容 論文発表 (10件)およびパネルディスカッション
オーガナイザー 大隅 久 (中央大学)、林 浩一郎 (IHI)、阿部 聡 (製造科学技術センター)
概要 人手不足への対応・生産性向上に向けた将来の生産システムにおいては,ロボットとの分業が不可能な作業へのロボットによる作業者支援が求められる。このような作業へのロボット利用を可能とするには,人間の行動に基づく駆動原理,人が無意識に行う動作の解明が必要となる。本OSでは,このような人・ロボット協調による作業形態を“合業”と名付け,そのための技術課題を明らかにし未来の生産システムに資することを目的とする。

 

以下に発表論文概要とパネルディスカッション概要を示す。

 

発表論文概要
 発表者テーマ概要
1○阿部 聡(MSTC)複雑高精度機械の組立技術 研究専門委員会(RSJ)合業:人と機械間の相互干渉を用いる新生産システム「人間行動駆動」と「動作リテラシー」を通じて人と機械が力や情報の相互干渉を利用することにより、それぞれの長所を生かし、単純な繰り返し作業以外をこなす、新たな協業形態「合業」を提案する。
2○宮本 杏菜(中央大)今給黎 咲良(中央大)濱崎 峻資(中央大)大隅 久(中央大)二人の作業者による長尺物の持ち上げ動作の解析人とロボットの協働により長尺物を持ち上げる動作を例に取り、ロボットに求められる機能を明らかにする。そのため主導的に動作するリーダの作業者とそれに追従する作業者による持ち上げを行い、その挙動を解析する。
3○稲村 和浩(中央大)岩﨑 健太(中央大)國邑 亮介(中央大)濱崎 峻資(中央大)大隅 久(中央大)人とロボットの協働によるねじ締め作業に関する研究人がボルトを持ちロボットがナットを持った際の協働ねじ締め作業において、人の手に負担を減らして円滑に成功させるための方法を提案し、試作システムによりその妥当性を検証する。
4○相山 康道(筑波大)田所 弘毅(筑波大(卒))孫 茂翔(筑波大)Helio Nonose(筑波大)衝突を許容しテキパキと動くロボット構造の検討人間協働ロボットは衝突時に相手に被害を与えてはならない.弾性関節はその要求を満たすが通常時に振動が起こるため,その剛性を可変とし,さらに可変粘性を加えることで,より安定に,テキパキと動作するロボットの構造を検討する.
5○塚本 侑志(電気通信大学大学院)斎藤 雄太(電気通信大学大学院)山下 雅裕(電気通信大学)杉 正夫(電気通信大学大学院)同期型の人間・ロボット共同作業における作業効率と心理的負荷本研究では、人間・ロボット協働作業における、ロボットの作業ペースと作業者の心理的負荷について調査する。講演では、研究の概要および研究仮説、仮説に対して取る予定のアプローチ手法について述べる。
6○谷川 民生(産総研)CPSを基盤とする人のモデルを考慮した人・ロボット協調作業における安全性と生産性の両立生産人口低下に伴い、人手が確保できなくなることで、生産現場や物流現場では、人とロボットが協調することで柔軟かつ生産性の高い作業を実現することが求められている。本発表では、その中での安全性と生産性の両立について、議論を行う。
7○岩野 航平(東工大)岡田 昌史(東工大)半自律掘削制御系における淀みの歪みに基づく人の操作誘導と類似タスク区別のためのインタフェース本研究では非線形力学系の次元拡張による類似タスク区別時の操作ミスを減らすために,分岐点での人の操作を誘導しタスク遷移を補助するベクトル場である淀みの歪みの設計を行う.また,以前に提案した軌道の変形との統合のために半自律系の改良を行う.
8○砂川 拓哉(IHI)林 浩一郎(IHI)村上 弘記(IHI)生産現場における手作業のモニタリング技術の開発組立てや仕上げ等の,生産現場における自働化が困難な手作業工程において,作業進捗のリアルタイムかつ詳細に把握する技術が求められている。そこで本研究では、画像等のセンシングに基づいて,作業進捗を推定する手法を確立する。
9○村上 弘記(IHI)生産システムにおける人とロボットの協働作業の新しい方向性(人とロボットの「合業」への期待)自動化が難しい作業に対して、人が主導する協働ロボットの活用が期待されている。これからの期待として人とロボットが相互に協力して作業する「合業」の実現で新しい生産システムへの期待について検討する。
10○吹田 和嗣(トヨタ自動車株式会社)モノづくり分野における人を中心としたロボットとの協働・協調化と合業への期待協働ロボットが多くのモノづくり分野で活用されるようになった。今後のより実用的な安全、安心の確保、助けあえる手段としての研究・開発が望まれる。本報では自動車製造ラインの協働化事例、サイバーフィジカルシステムを活用した人の身体的な負担感把握事例について話題提供する。 今後の人を中心とした協働化、協調化さらには合業への課題と展望について議論する。

 

パネルディスカッション概要
テーマ人・ロボットの新たな協働のあり方とこれからの課題
開催日時2022/9/7 13:30 ~ 14:15
場所東京大学工学部2 号館室4 階 244 室
モデレータ大隅久 (中央大学)
パネリスト吹田和嗣 (トヨタ自動車)、守屋俊夫 (日立製作所)、谷川民生 (AIST)、村上 弘記(IHI)、林浩一郎 (IHI)、阿部聡 (製造科学技術センター)

内容:

ジェットエンジンや産業用大型機械などの高精度複雑機械の生産工程における人・ロボット協働の課題、シミュレーション技術、未来像などについて、ロボット研究開発や企業における生産技術的な立場から議論。主な議論を以下に示す。

 

議論1:

最終的に創発がゴールなのか、それともこれまで人にやらせたことがなかったことをロボットができることで新しい産業のあり方ができるのではないかと言う理論を持っているのか。

→ 正確なことを全く狂いもなくずっと続けることは機械が得意なこと。人間は創造的に動けまわれるし、いい加減な動きもできる、あいまいなことをきちんとやり遂げることができる。そういうものをどういう風に組み合わせていくかというのが課題。人間行動駆動と動作リテラシーと言うものから入るが、人間がきっかけを作るけれどもロボットが一緒になってものを持ったり、運んだり、削ったり、締めたりということやる。これは新しい産業のあり方となる。本テーマのきっかけは人手不足で大変ということで、本当にロボットを使わないといけない、そういう背景があってのスタートになった。

 

議論2:

動作保証ができる動作の数から、多品種少量のタスクの幅が決まるのではないか。動作保証できる基本タスクのようなものを組み合わせて多品種少量に対応するバリエーションを出せると言うことになるが、人間の動きの微妙に違うものを全部動作保証していたら、シミュレーションの世界であればできるが、フィジカルで本当にできるか。

→ 動作保証は、今まではメーカが保証するという考え方だった。AIとかを使うことによって、誰が責任を取るかということが出てくる。法整備は必要であるが、基本的には私自身がマイロボットやマイAIを自分でつくっていくのではないか。それをやる仕組みをつくっていくこと。先ほどの人とのかかわりもあったが、人とロボットが分担と言うよりは、「共進」。AIとかロボットを使うことによって、また新しい人の発見があって、それで生産性とか作業性をどんどん上げていく、そういう仕組みを上手く作れるかということ。

 

まとめ

→ 合業のキーワードとしていくつかある。コミュニケーションが大事であること、安全安心、モデルとの関わり、さらに安全に安心に使えるハードウェアが必要であること。合業のようなこれからの人とロボット協調の分野には解決しなくてはいけない課題はたくさんある。興味のある方はまたオーガナイズドセッションや本研究専門委員会に参加してほしい。