「「登る」ロボット」特集について
日本ロボット学会誌42巻8号「刺激―応答性に基づくロボティクス」
- 流体駆動ロボットが生み出す刺激―応答性(塚越 秀行)
- 力学刺激応答性を持つソフトロボット(梅舘 拓也)
- 無脳ロボットアプローチ:全身に埋め込まれた刺激―応答デバイスによる運動パターンの創発(増田 容一)
- 運動・感覚・脳への介入から紐解く昆虫の適応能(大脇 大・志垣 俊介・青沼 仁志)
- クラゲ走光性を可視化するロボットプラットフォームの開発(清水 正宏・本田 和羽・山田 のぞみ・伊藤 浩史・池田 周平・奥泉 和也)
- 機能分子材料とソフトロボティクス(須賀 健介・齊藤 尚平)
- 化学振動の同期によるゲルの秩序的な体積変化が生み出す生体的な機能(助川 太朗・前田 真吾)
- 刺激応答と植物ロボティクス(新竹 純)
- プリンタを用いた紙への刺激パターニングと運動プログラミング(重宗 宏毅)
- 環境駆動型自励振動アクチュエータとロボット応用(難波江 裕之)
- 力学制御で探るアクティブマターの運動と秩序創発(前多 裕介・家永 竜)
本特集ではロボットに刺激―応答性を埋め込むことで,その機能を高度化するための材料・製造法・システム設計論などについて幅広い視座からご議論いただきます.
生体システムをはじめとする自然界の複雑システムは,多数の刺激―応答性を連鎖させることで生命活動の維持や,外界への高度な適応を可能にしています.今後,刺激―応答性を活用するロボットの設計論を発展させることで,身体そのものが高度な適応能を備えた有機的なロボットシステムが実現する可能性があります.
現在,様々な分野でアクティブマターやソフトマターなど,刺激―応答性にまつわる現象の理解やその活用が議論されています.ソフトロボット分野でも,材料の非線形特性や,化学反応などを利用して刺激―応答性を生み出すバルブやアクチュエータの研究が行われています.本特集では,ロボット学のみならず,分子化学,物理学,生物学など多彩な研究分野のみなさまにご寄稿いただきました.本特集が,多分野をまたぐ議論のきっかけになり,ロボット学のさらなる発展に繋がれば望外の喜びです.
最後に,本特集の冒険的なテーマに対して,独自の視座とご経験に基づく議論をいただいた先生方に深く感謝を申し上げます.またご助言をいただいたロボット学会編集委員の皆様,事務局の皆様,温かいご配慮をくださった大阪大学 石川将人教授に厚く御礼を申し上げます.(塚越秀行 東京科学大学,増田容一 大阪大学)