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第150回 自己位置推定・地図生成の理論から実践まで(実施報告)


第150回ロボット工学セミナー実施報告
「自己位置推定・地図生成の理論から実践まで」


日時:2023年12月5日 (火) 9:50~16:00
会場:オンライン (Zoom)
参加者数:161名
オーガナイザ:産業技術総合研究所 小出 健司
サブオーガナイザ:オムロンサイニックエックス 濱屋 政志
セミナーURL:https://www.rsj.or.jp/event/seminar/news/2023/s150.html


セミナー概要

 自己位置推定・環境地図生成 (SLAM) 技術は移動ロボット研究分野において長く研究されている一方,近年は産業分野への応用も盛んなトピックとなっている.そのようなSLAM技術について,学術的な基礎理論から産業的な応用まで含めた利活用をまとめたいと思い本セミナーを企画した.午前は学術的な内容を中心として大学を中心に講師をお呼びし,午後から終了に向かって産業的な内容にシフトして企業から講師をお呼びした.


第一話: Laser SLAM と Visual SLAM の全体像

千葉工業大学 原 祥尭

 SLAM技術について産学両方の立場から長く取り組まれている千葉工大 原先生からSLAM技術の全体像の説明を頂いた.基礎的な定式化から代表的な手法の説明まで体系的にわかりやすくご説明いただき,セミナーの導入として良い内容であった.質問はスキャンマッチングやグラフ最適化の詳細など,実践的な内容が多かった.


第二話:三次元点群の特徴点を利用した地図生成とナビゲーション

神戸大学田崎 勇一

 神戸大 田崎先生からご自身の研究トピックを中心として,SLAMにおいて不可欠な再訪検知や大規模グラフ最適化のお話をいただいた.質問は各手法の詳細についてのものが多く,聴講者の理解度も高い印象であった.


第三話:自己位置推定に関する研究およびその社会還元を目指した取組紹介

名古屋大学・株式会社LOCT 赤井 直紀

 自己位置推定の安全性・信頼度の評価について名古屋大 赤井先生からご講演をいただいた.信頼性推定のためのグラフィカルモデルについて詳細な説明があり,現状の研究課題などもよく伝わる内容であった.また,赤井先生が起業された自己位置推定技術の会社LOCTの活動のお話を通じて,学術界から産業界への接続について理解が深まった.


第四話:自動運転システムにおける自己位置推定技術の適合性向上に向けた取り組み

株式会社ティアフォー 蓑田 浩史

 ティアフォーが開発している自動運転ソフトウェアAutowareの内部構成や設計について蓑田様から詳細な解説を頂いた.広く実社会でテストされているシステムということもあり,アルゴリズム面に限らず安定運用のための工夫なども知ることができる実践的な内容であった.実環境での問題対処法などを中心に質問も活発で,聴講者の注目も高かったようである.


第五話:3次元地図の作成技術と産業界への利活用

株式会社 マップフォー  橘川 雄樹

 地図生成サービスを展開するマップフォー 橘川様より,製品としての地図データとその計測機器の産業利活用のお話をいただいた.様々な地図データ種類のご説明や,それぞれの利用方法の話があり,この後の産業界での地図利用の重要性が高まることが伝わる内容であった.インフラとしての地図データ運用についての質問が多く見られた.


まとめ

 本セミナーでは産学界から五人の講師をお呼びし,自己位置推定・環境地図生成について基礎理論から実践応用まで包括したお話を頂いた.講師陣についてはバランス良く選ぶことができたため,学術的内容から産業的内容まできれいにグラデーションがついた内容になったように思う.全セッションにおいて時間いっぱいまで質問が寄せられたため,聴講者の理解度も高かったのではないかと思う.今回はスケジュールのすり合わせなどでオンライン開催としたが,講師のうち何名かは現地開催を強く希望されていたので現地開催についてもう少し検討しても良かったかと反省した.
 最後に,本セミナーの開催にあたってご協力頂いた講師の先生方,RSJ事務局,サブオーガナイザの濱屋様,そして聴講者の皆様にに心からお礼申し上げます.