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第154回 数理に基づく学習とその応用(実施報告)


第154回ロボット工学セミナー実施報告
「数理に基づく学習とその応用」


日時:2024年7月17日(水) 10:00-16:50
会場:オンライン
参加者:57人
オーガナイザ:澤田好秀(株式会社松尾研究所)
サブオーガナイザ:松崎成道(トヨタ自動車株式会社)
セミナーURL:https://www.rsj.or.jp/event/seminar/news/2024/s154.html


セミナー概要

近年,拡散モデルなどの生成AIに関する研究開発が注目を浴びています.一方で,現在の深層学習技術をより生体に近づけるために,スパイキングニューラルネットや自由エネルギー原理,少数の訓練データで高精度な学習を実施する転移学習,テンソルネットワークといった数理モデルなど,基礎的な技術も着実に進展しています.このような数理に基づく様々な技術の最新動向を知っておくことは,データやモデルの大規模化が激しい現代において,味わい深い研究を実施するために必要不可欠です.
本セミナーでは,様々な数理的技術を研究されている新進気鋭の研究者の方々をお招きして,基礎から最新までの研究事例を幅広くご紹介いただきました.


第一話 ニューロモルフィックエンジニアリングにおける数理

千葉工業大学 酒見 悠介 様

脳を模倣したニューロンモデルを用いたスパイキングニューラルネットワーク(SNN)をアナログ回路で実現するニューロモルフィックエンジニアリングについてご紹介いただきました.前半ではニューロンモデルの違いから学習則までご紹介いただきました.後半では,アナログインメモリ回路の非理想的特性を直接取り込み学習し,回路にマッピングすることでモデル化誤差を抑える酒見先生の取り組みをご紹介いただきました.


第二話 脳内生成モデルのリバースエンジニアリング

理化学研究所 磯村 拓哉 様

脳の統一理論である自由エネルギー原理についてご紹介いただきました.前半では神経細胞の活動の積分から得られるヘルムホルツエネルギーを微分するとHebb則などのシナプス可塑性が導出できる点やヘルムホルツエネルギーはベイズ推論で利用される変分自由エネルギーと一致する点をご紹介いただいきました.後半では,in vitroやin vivoな実験による実証実験についてもご紹介いただきました.


第3話 拡散モデルのロボティクス応用

パナソニックホールディングス株式会社 岡田雅司 様

近年急激な進展を見せている拡散モデルとそのロボティクスへの応用についてご紹介いただきました.前半では拡散モデルの導出からDiffusersを使ったコーディングの方法をご紹介いただきました.後半では拡散モデルのロボティクス応用に関する関連研究マップに基づいて重要な研究を複数ご紹介いただきました.


第4話 テンソルネットワーク分解の基礎と機械学習への応用

名古屋工業大学 横田達也 様

近年注目されている数理モデルであるテンソルネットワーク分解の基礎と,それを機械学習へ応用する萌芽的な研究アプローチの動向について紹介いただきました.前半ではテンソルの抽象的な表記であるテンソルダイアグラムの考え方をご紹介いただきました.後半ではデータ処理や機械学習への応用として深層学習モデルの圧縮技術への応用やテンソルネットワーク分解による確率密度推定についてご紹介いただきました.


第5話 転移学習の基本概念と統計的学習理論からの視点

名古屋大学 松井孝太 様

現在のタスクを効率的に解決するために他のタスクで獲得したデータや知識を利用する転移学習について基礎から最新動向までご紹介いただきました.前半では転移学習の問題設定や種類,負転移やドメイン間の一致度についてご紹介いただきました.後半では教師無しドメイン適応に焦点を当て,重要度重み付き学習やドメイン敵対的学習,ファインチューニングについてご紹介いただきました.


まとめ

本セミナーでは,スパイキングニューラルネットや自由エネルギー原理,拡散モデルやテンソル分解,転移学習といった技術について,数理的な側面から応用まで5名の先生方にご講演いただきました.先生方には特定の技術ではなく「数理」という比較的緩めな制約の上でご講演いただいたため,様々な研究内容について幅広く触れられたと考えます.
本セミナーはオンラインでの開催とさせていただきました.これまでのノウハウの蓄積もあって大きなトラブルもなくスムーズに進行できたかと思います.
最後に,ロボット学会事務局の村上様,サブオーガナイザーをお引き受けいただきました松崎様(トヨタ自動車)には,大変お世話になりました.心より感謝申し上げます.