SEARCH
MENU

活動報告2023:食品サンプル規格標準化研究専門委員会


概要

 食品サンプル規格標準化研究専門委員会は、2023年度に発足した新しい委員会である。
 今日、人間協働ロボットの社会実装のフィールドとして、食品産業の自動化が注目されている。食品製造の多くのプロセスは専用機による自動化が進んでいる一方、弁当詰め作業や配膳作業などの人手による作業が多く残されている。食品は、製造業のワークのように形状や物理特性が安定せず、柔軟、湿潤、経時変化が速い等、ロボットハンドリングにとっては困難な要素が多く、また、食品のバリエーションも膨大である。このため、食材に合わせたハンドリングシステムの開発及び運用時の調整作業に多くの時間と労力が割かれる。現在は、食品の形状や柔らかさを模擬して作られた食品サンプルが、ロボット開発や調整に用いられ始めているが、ハンドリングの肝となる食品自体の素性に関する把握が十分に進んでおらず、評価基準も体系化されていないため、なかなか適切な運用に至っていない。このような背景から、日本ロボット学会産学連携委員会では、2021年度より本研究専門委員会の前身である食品評価サンプル規格標準化WGを組織し、食品ロボット研究者、ロボットメーカー、食品サンプルメーカー、化学材料メーカーに参加いただき、食品評価サンプルの規格標準化に関する活動を行ってきた。
 2021年、2022年のオープンフォーラム開催、2022年度にはNEDO先導研究に採択され食品サンプルの例として、ハンバーグ、コロッケ、サンドイッチ、大福を開発した。ここではNEDO先導研究について報告する。


ハンドリング評価のための食品サンプルに関する先導調査研究概要

 ロボットによるハンドリングを評価するための食品サンプルに対象とする食品として、1)大福、2)サンドイッチ、3)ハンバーグ、4)コロッケを選んだ。食品計測、仕様・試作方法の決定、サンプルの試作、サンプルの評価を実施した。食品計測においては、対象とする食品の三次元形状、弾性特性、摩擦特性の計測を行った。さらに、対象とする食品に対して仕様・試作方法を決定し、サンプルを試作した。試作したサンプルと実物を比較するハンドリング実験を行い、試作したサンプルを評価した。
 大福のサンプルの試作においては、特有の粘弾性特性(もちもち感)と三次元形状を再現することを試みた。粘弾性特性を重視したサンプル(図1)と三次元形状を重視したサンプル(図2)を試作した。

 

図1 粘弾性特性を重視した大福のサンプル(αゲル)

 


図2 形状を重視した大福のサンプル(超硬質ウレタン樹脂)


 サンドイッチのサンプルの試作においては、パンと具材を別々に試作し組み合わせて、フィルムで包装することを試みた(図3)。この方法では、具材のサンプルを変更することにより、様々なサンドイッチのサンプルを実現することが可能になった。

 


図3 ハムレタスサンドイッチのサンプル


 ハンバーグのサンプルの試作においては、形状と表面の状態を再現することを試みた。ハンバーグの表面には、油が付着しており摩擦が少ない。このような表面を再現することを目指した。試作においては、三次元プリンタで型を作り、モールディングで試作する手法、エラストマー材料の三次元プリンティングで試作する手法、液体シリコーンの三次元プリンティングで試作する手法を試みた。

 


図4 モールディングで試作したハンバーグのサンプル


 コロッケのサンプルの試作においては、形状と表面の状態を再現することを試みた。揚げられたパン粉が付着しているコロッケの表面を再現することを目指した。

 


図5 コロッケのサンプル


 ハンドリング評価実験では、双腕ロボットのFoodlyやSoft Robotics社のmGripなどのハンドを用いて試作したサンプルと実物を比較した。実験の様子を図6に示す。サンプルと実物ともに概ね同様に把持可能であったが、実物では少し潰れてソースが出てくるものもあった。また、ハンドによっては表面のソースにより実物のハンバーグを把持できない物があった。

 


図6 サンドイッチサンプルの把持実験の様子