「水圧駆動ロボット」特集について
【展望】
- 第4の動力源:水圧駆動の魅力と課題(塚越 秀行)
【解説】
- エアハイドロブースタで動く水圧ロボット(玄 相昊)
- 海中作業用パワーアシストスーツ―空気圧駆動と水圧駆動の比較―(石井 千春・椚原 大輔)
- 空飛ぶ消火ホース(安部 祐一・山内 悠)
- 水圧駆動内視鏡ロボットP-arm:どのような経緯で開発し,なぜ実用化に至らなかったか(西川 敦)
- 水圧駆動システムのシミュレーションと水圧ポンプ試験法(眞田 一志)
- 遠隔水圧駆動ロボット(中村 勇気・野田 智之・仲田 佳弘)
- 水圧駆動ロボットと悪環境対応(三木 正之)
- ロボット駆動に用いられる水圧機器の開発(下山 弘高・牧田 拓也・杉村 健)
- 水圧駆動ロボットHUMALT の開発と実機適用(岡田 聡)
流体圧はロボットの動力源として広く使用されています.なかでも水圧は,空圧と比べて高出力を発揮でき,油圧と比べて環境や人体に無害であることから,食品や医療などの衛生環境,災害現場,海中,原発などの極限環境で使用されるロボットへの応用が期待されています.一方で,水は潤滑性や粘性が乏しく機器内部で漏洩や摩耗しやすい欠点があり,弁やシリンダなどの要素機器,およびそれらを組み合わせたロボットシステムの研究開発では障壁となります.この取り扱いの難しさから水圧駆動の研究開発やその活動を支える要素部品は油圧や空圧と比べまだまだ不足しているのが現状です.
本特集では,水圧駆動分野のこれまでの知見,課題,研究開発の苦労話を分野内外の読者に広く共有し分野の発展につなげるため,研究機関と企業所属の研究者の方々に,水圧駆動分野の展望と個別の研究開発事例についてご紹介いただきました.展望では駆動源としての水圧の立ち位置の変遷を他の流体圧や電動と比較しながらご解説いただきました.個別事例の解説では,要素機器とロボットの実機開発のほか,シミュレーションや試験法についてもご執筆いただきました.
この特集が水圧駆動ロボット分野の課題解決に向けた読者の研究開発の一助となれば幸いです.最後に,本特集の実現にご協力いただいた編集委員および日本ロボット学会事務局の皆様,ご多忙のなか記事をご執筆いただいた筆者の方々に心より感謝申し上げます.(山川寛晶 日立製作所)