「建設ロボットシステム」特集について
【展望】
- 災害対応ロボットと建設用ロボット(大須賀 公一)
【解説】
- 土工事における自動施工技術の研究開発―SIP スマートインフラの取り組みと施工の自動化レベル―(永谷 圭司)
- 清水建設におけるロボット開発・BIM との関係性(印藤 正裕・五十嵐 俊介・八條 貴誉・行實 宗一郎・横井 秀平)
- 竹中工務店におけるロボット開発,ロボットと人の関係性改善(永田 幸平)
- 建設機械の遠隔/自動化を加速するレトロフィット技術(大野 和則)
- 自動施工技術基盤OPERA の現状と将来展望(山内 元貴・遠藤 大輔・阿部 太郎・橋本 毅)
建設業におけるロボット導入は,長年にわたり本業界の重要な目標の一つとされてきました.一方で,近年の確率ロボティクスや深層学習の進展,さらにはアクチュエータや計算機性能の向上を背景に,建設業に不可欠な実用的な屋外作業を実現可能とするロボットに関する研究が,年々増加の傾向にあります.
こうした流れを受け,本学会誌においても建設ロボットを特集する号がこれまで幾度となく企画されてきました.なかでも,直近10年間を振り返ると,災害対応ロボットに焦点を当てた特集が継続的に取り上げられており,その契機となったのが,2011年の東日本大震災に端を発した原子力発電所事故への対応であることは疑いありません.
これらの特集号は,いずれも極めて重要な課題を扱ってきましたが,共通して「災害現場という非常事態」を前提としている点は特筆に値します.しかし一方で,平時における建設施工のロボット化・システム化を進めることこそが,工業製品としての建設施工ロボットの裾野を広げ,ひいては非常時のロボット開発への貢献にもつながると考えられます.
周知のように,建設施工の現場では,計画・調査・設計段階から三次元モデルを導入するBIM/CIMの活用が進められています.とりわけ日本においては,少子高齢化と災害の激甚化により,限られた人員で社会インフラを維持する必要性が年々高まっています.こうした状況下では,建設施工に用いられる土工機の自律化を検討する際,個々の作業単位に着目するだけでなく,施工全体を俯瞰する視点が不可欠です.
そのうえで,人と機械の関係性を多層的に捉え,操縦者の負担軽減とシステム開発の効率化を両立する環境の構築が求められます.さらに,現場で自在に移動・作業可能な革新的土工機の開発も,今後の研究の基盤となるでしょう.そのためには,従来十分に整備されてこなかった「開かれた設計」とも言える新たな設計思想の確立が必要です.
本特集号では,過去10年間に急速に発展した建設ロボット技術を概観するとともに,平時の災害対応力の維持や,少子高齢化が進行する社会における効率的な国土保全のあり方について,課題と全体像を明らかにすることを目的としています.(大須賀公一 大阪工業大学)