第158回ロボット工学セミナー実施報告
「機械特性が変化する「可変」ロボットの仕組みとその応用事例」
開催日:2025年5月29日(木)10:00~17:20(開場9:40)
会場:【現地会場】東京大学 浅野キャンパス 武田先端知ビル 5F 武田ホール(東京都文京区弥生2-11)および オンライン配信
聴講数:現地16名、オンライン48名
発表:5名の講師による発表.講演は発表50分、質疑応答10分.パネルディスカッション45分.
報告者(オーガナイザ):株式会社オムロン 瀧上孝太
セミナーURL:https://www.rsj.or.jp/event/seminar/news/2025/s158.html
第1話 ロボット設計の醍醐味と情報処理機能を内包する機構
広島大学 高木 健 先生
差動機構を使った倒立振子型ロボット、5リンク機構を使った変速機など環境に柔軟に対応できる機構について説明頂きました.また、アーム付きドローンや4足歩行ロボットについてもご説明を頂き、ロボット作りには機能配分と条件緩和が大切なことを教えて頂きました.
第2話 構造・機能・対環境性を可変させるトランスフォームロボット
東京大学 真壁 佑 先生
可変ロボットとして構造・機能・対環境性を可変できるトランスフォームロボットについて可変機構だけでなくシステム全体について説明頂きました.具体的には接合機構や、減速機構、パラフィン被膜といったハードウェア要素、ロボットモデルへの持続可変機能の埋め込みなどを用いた身体機能の抽象化、身体機能遷移グラフおよび身体機能ノードの経路探索を用いた身体機能と行動の同時計画について説明頂きました.
第3話 極限環境で活躍するロボット開発における機構設計の重要性
東京大学極限環境ロボット研究所/東京科学大学 広瀬 茂男 先生
可変機能型機構としてロボットの機能が他の機能としても使える導入機構の汎用化手法、主駆動力出力のなぎを使ってロック機構などを切り替える切替機構の最小化手法を説明頂きました.また、可変機構の他にも重要な設計原理として負のパワー消費防止の原理、干渉駆動の原理、疑似的多自由度化の原理についても開発されたロボットを例に挙げながらご説明頂きました.
第4話 網状索道自走機による可変構造パラレルワイヤ懸垂機構と回生クラッチについて
東京科学大学 菅原 雄介 先生
可変ロボットとして車輪付4節機構を用いた階段昇降車いす、網状索道ロボットと可変構造パラレルワイヤ懸垂機構についてご説明頂きました.階段昇降車いすは干渉駆動により、関節と車輪を動かすモータを2個に節約していました.パラレルワイヤ懸垂機構は網状索道ロボットにウィンチを搭載し、ワイヤ繰り出しを空間的に変更することで実現されていました.また、可変ロボットの他に動力を人間が、制御を機械が担う人力ロボティクスについてもご説明頂きました.
第5話 人間の関節弾性や脱力に着想した人間型ロボットの開発
芝浦工業大学 大谷 拓也 先生
可変ロボットとして人間の走行時野党給仕の戦略を基に関節弾性や脱力を実現する人間型ロボットをご説明頂きました.具体的には人間型ロボットにおけるCFRP重ねバネによる膝関節弾性を活用した効果的なジャンプ動作、ピン機構による肘脱力を活用した投球動作についてご説明を頂きました.
パネルディスカッション
5 人の先生方と現地・オンライン参加者の皆様方で、機械・ロボティクスの今後の発展などについてざっくばらんにお話しいただきました.オーガナイザが準備した話題に加え、参加者の方からの 質問もあり、議論は大いに盛り上がりました.
ロボットのメカ設計の手順、アイデア出しではミニマリズム、コンパクトにすること、日常でも様々な機構に興味を持ってアイデアのストックを蓄えていくことが大切という意見を複数の先生から頂きました.一方でシンプルにしすぎることで複雑な要件を満たすことができない場合もあるという意見も頂きました.
今後の人とロボットの関係性では人間をサポートするロボットはどういう形であれ出てくるだろうという意見を多く頂きました.一方で、何から何自動化しない方が人間にとってよいという意見も頂き、ロボットと人との関係を考えると同時に人がどうなっていきたいかも考える必要があることを感じました.
おわりに
上述の通り、本セミナーでは5人の先生方から「「可変」ロボット」をテーマに、可変機構の仕組みからロボティクス分野への応用まで様々なお話を頂きました.具体的には、第1話では差動機構などの可変機構の仕組みについて、また、第3話では可変拘束化を含む設計原理について講演頂きました.第2・4・5話ではトランスフォームロボット、網状索道ロボット、ヒューマノイドロボットなど様々なロボットへの可変機構の応用事例をご講演頂けました・初学者の方から専門家の方まで幅広くご興味をもって参加いただける良い機会 になったかと思います. 最後に、ご多忙の中お時間を確保くださりご講演をお引き受けいただいた先生方、運営を支えてくださったロボット学会事務局、サブオーガナイザの本田様、ご参加いただきました全ての方々に心から感謝 申し上げます.

