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活動報告2025:複雑高精度機械の組立技術研究専門委員会


複雑高精度機械の組立技術研究専門委員会の活動の成果を第43回学術講演会オーガナイズドセッション(OS)において発表した。

  • 名 称:第43回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2025):
  • 日 時:2025年9月4日(木)  
  • 場 所:東京科学大学 2G2,2G3
  • OS名称:人・ロボット協調による『合業』型生産システム(第4回)
  • OS番号:OS27
  • OS内容:論文発表 (8件)
  • オーガナイザー:大隅久(中央大学),村上弘記((株)IHI), 林浩一郎((株)IHI),阿部聡(MSTC)

 

概要

人手不足対応・生産性向上に向けた将来の生産システムでは,ロボットとの分業が不可能な作業へのロボットによる作業者支援,“合業”が必要となる.本OSは,ロボットが人に合わせて人間的に動作する仕組みを,支援動作の汎用化,ロボットの階層制御,軽量構造ロボット,サイバーフィジカルシステムの利用による協調安全等で実現することを目指し,そのための技術課題を明らかにし未来の生産システムに資することを目的とする.

 

結果

参加者約90名(昨年は50-60名)と非常に盛況で、年々合業OSへの参加者は増加しており、議論も活発に行われた。今年の合業OSの特徴としては、企業の方の聴講が多く、全体の2/3程度を占めており、産業界の合業への興味が高いことが伺える。以下に発表論文概要を示す。 

 

発表論文概要

注:演題名〇印は本研究専門委員会のメンバー

  演題名 講演概要文 氏名 所属

1

〇合業のための技術課題

人とロボットの新しい協調の形態である合業について,これまでRSJフォーラム,OSにおいて議論してきた内容を整理し,これからの社会に求められるロボットによる人の支援に必要となる技術課題について検討した結果を報告する。

大隅久

中央大

2

〇相互同調型テンポガイドによる自然な作業改善支援フレームワークの提案

人材不足が深刻化する中,多様な人材による持続的な生産性向上のためには,それぞれ作業者が低負荷かつ高い生産性を発揮できる状態で作業する必要がある.本稿では,そのような理想的な作業状態への到達を支援する人と機械のインタラクションの枠組みを提案する.製造現場の繰り返し作業に対し,非線形振動子による相互同調的な作業テンポガイドを設計し,明示的な指示と比較して,低負荷かつ自然に生産性を高める効果を確認した.

白倉尚貴

産総研

3

〇自律・協調型システムによるフリーライダー問題の対応方法

ゲーム理論等で広く知られるフリーライダーの基本問題に、別途提案している自律・協調型システムのコンセプトを適用する。全体を調停する全体知と呼ばれる第3者を存在させ、これが全体最適ではなく、自分への支持数を増やすことを目指して行動すると、全体として望ましい状況を導くことができることを示す。

守屋俊夫

(株)日立製作所

4

自律分散協調技術促進に向けたロボット競技会のデモシステム

労働力不足への対応や危険作業の代替手段として、複数台のロボットを中央制御なしに連携させる自律分散協調制御技術が抗たん性やスケーラビリティの観点から期待されている。今回、特定のリーダ機を持たず、ロボット同士が相互に通信しながら全体の状況を推定し、各機体が自律的にミッション達成に必要なタスクを選択・実行することを特徴とするデモシステムを構築した。本発表ではデモシステムの概要と実機での検証結果を示す。

勝又洋介

三菱電機

5

〇骨格検出と物体認識を通じて組み立て作業を識別するAIモデルの構築

工場内における人手作業をモニタリングする技術は、作業記録の自動作成や作業ミス自動検知などの他、人とロボットが緊密な協働作業(MSTCでは「合業」と呼称している)をする際に、ロボットが人の状態を理解することにも役立つ。本研究では、作業台上での組み立て作業に焦点を当て、作業環境全体を撮影したカメラ画像から、作業者の骨格情報および主要物体(ワーク・工具)の位置情報を抽出し、それらから作業内容を識別するAIモデルを構築し、その有効性の検証を実施した。

砂川拓哉

IHI

6

〇人協働作業のための空間移動マニピュレータの検討

合業は自動化に適さない大型機械等の少量生産の生産現場等に適した手段である.大型機械を対象とした作業を行う場合,ロボットの可動範囲が問題となる.本研究では平面ではなく空間を移動することで大型機械を対象とした合業も可能とするマニピュレータを開発する.ワイヤ懸垂型のように空間占有率は高くなく,ドローン搭載型のように可動時間の問題もない機構を提案し,その試作により有効性の検討を行った.

相山康道

筑波大

7

〇高ペイロード比教示なしロボット

既存ロボットは、高精度実現のため本体重量が重く、ペイロード比が低く、人と協働で重量物を扱えるロボットが無い。このため、ペイロード比が高く重量物を取り扱える新形態ロボットとその制御法の開発が必要である。これにより、航空機用エンジン、EV バッテリパック、砂型鋳造部品等の労働集約型作業のロボット化やクレーン作業の廃止等の現場革新ができ、ロボット未導入新産業分野へのロボット適用も可能となる。

阿部聡

MSTC

8

ロボットアームを用いた注湯作業の直感的な遠隔操作

注湯作業は自動化が求められているが、製品多様化に合わせた柔軟な作業が課題であり、いまだ手作業で行われる場面は多い。本研究では安全性を向上させ人の柔軟な対応力を生かすため、ロボットアームを遠隔操作し注湯作業を行うシステムを開発した。直交座標系に基づく操作インタフェースによりロボット動きの直感的な理解を可能とした。さらに容器内の残量に応じた力覚提示により操作性の向上をはかり、実験によりその有用性を実証した。

加藤史也

東京科学大学

9

〇BiLSTMによる連続動作予測を用いた協調ねじ締めロボットのリアルタイム制御

「合業」と呼ばれる人に連動したロボット制御によって,従来自動化が難しいとされてきたボルト・ナット締結作業の半自動化システムを開発した.本システムでは,ロボットが作業者の動きに合わせてねじ締め作業を行うだけでなく,ニューラルネットワークモデルの一つである「BiLSTM」と「姿勢推定(OpenPose)」を組み合わせ,作業者の動きを逐次予測し,より早い段階でのタスク完了を目指す.

鮎川駿平

中央大学

10

〇EVバッテリの解体におけるボルト外し作業における合業

EV車に採用されているリチウム電池のサーキュラーエコノミー化を推進するために簡便なリサイクル技術の実用化が期待されている。バッテリASSYの解体に必要な作業として、本研究ではボルトを外す作業支援に着眼した。人を中心としたボルト外す作業の身体的なアシスト技術と加工点における合業について考察した。肉体的負担感の低減として人体への入力振動低減、生産性向上の視点でサイクルタイム低減効果を評価したので報告する。

吹田和嗣

大同大

11

画像認識を用いた解体作業に対するロボット遠隔操作の支援

使用済み自動車の解体は車種の多様性から自動化が難しく、ロボットの遠隔操作が有効と考えられる。本研究では、ロボットアームとボルトの位置・姿勢を合わせる操作を支援するシステムの開発を目指した。システムは画像認識に基づいて操作を誘導し、障害物でボルトが見えない場合でもその位置を推定する。8名の参加者を対象に比較実験を行った結果、作業支援システムの使用により作業時間が短縮され、ロボットの移動量も減少した。

大和田椋也

東京科学大学