
「ロボット・AI技術シーズの社会実装によるSDGs達成に向けて」特集について
日本ロボット学会誌44巻1号「ロボット・AI技術シーズの社会実装によるSDGs達成に向けて」
【展望】
- ロボット・AI 技術シーズの社会実装によるSDGs 達成に向けて(浅田 稔・小林 傳司)
【解説】
- 発達障害特性にかかわる困難感への対処法提案チャットボットの研究開発と社会実装―多様な神経特性を持つ人が活力を持って自己実現できる社会を目指して―(樫原 輝・長谷川 福子・佐々木 銀河)
- 最後の一人を救うコミュニティアラートシステムのモデル開発および実装(原 裕太・小野 裕一・橋本 尚志・松藤 慶之・若尾 波月・長谷川 誠)
- 公共交通のサービス共創支援シミュレーション手法(金森 亮・野田 五十樹)
- ジェスチャインタフェースを活用した運動機能障害者のための就労・教育支援モデルの構築(依田 育士)
- 感染症制圧用情報技術の実用化に向けた多施設フィールドトライアル(奥村 貴史)
- 多様なステークホルダーの共創と連携による包摂的な眼科医療の社会実装(中山 慎太郎・横岩 良太・清水 映輔)
- 移動困難者の回遊・交流・社会参加を実現する公共空間マネジメントDX プラットフォームのシナリオ創出(高取 千佳)
本特集は,「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(Solve for SDGs)」における多様な実践事例を俯瞰し,ロボット/AI技術の社会実装がどのように現場の課題解決へ結びつき得るのか,またその際に求められる新たな視座を提示することを目的とする.近年,ロボット/AI技術は急速に進展し,医療・福祉・防災・交通・教育など多領域の社会課題に対する有力な選択肢として期待されている.しかし,技術を「機能」として導入するだけでは十分に成果が得られないことが,現場の実態から明らかになりつつある.課題の背景には,多様なステークホルダーの利害・文化・組織構造・地域特性が複雑に絡み合い,技術がそれらの文脈と整合的に組み込まれなければ,本質的な解決には至らない.本特集は,その点を実証的に示すものである.
Solve for SDGsは,研究代表者と地域の協働実施者がペアを組み,「現場知・地域知」を基盤に共創的に課題解決へ取り組むことを特徴とする.シナリオ創出フェーズでは,地域のボトルネック分析と新たな社会システム像の構想化が行われ,続くソリューション創出フェーズでは,技術・制度・運用の実証を通じて,他地域展開も見据えた具体的解決策が提示される仕組みが整えられている.応募・採択データの分析からは,人文社会系研究者の参画の多さや,都市部研究者による地域課題の拾い上げなど,従来のロボット研究とは異なる知の構造が明らかになり,医療・福祉分野への集中は日本社会の現実的課題を反映している.
本特集で紹介するプロジェクトは,チャットボットによる神経多様性支援,インクルーシブ防災,地方交通の最適化,運動機能障害者のICT利用支援,感染症対策データ連携,眼科医療アクセス改善,超高齢社会の移動支援など,多領域にわたる.いずれも,技術導入にとどまらず,利用者・自治体・医療機関・企業・市民との協働を通じ,持続的な運用モデルの設計に踏み込んでいる点に特徴がある.
また特集では,社会実装にはELSI・RRIの観点が不可欠であることも強調される.技術が社会へ影響を与えるだけでなく,社会が技術を形成し続けるという相互作用の理解が必要であり,「何のための技術か」という根源的問いに立ち返る姿勢が求められる.
本特集が,ロボット・AI研究における社会実装の新たな方向性を示し,SDGsへの具体的貢献を広げる契機となることを期待したい.(浅田 稔 大阪国際工科専門職大学/大阪大学)



