
「研究室をつくろう」特集について
【解説】
- 道場としての研究室(大須賀 公一)
- ロボット・インタフェース研究室の立ち上げ(大澤 友紀子)
- 研究室のパフォーマンスを高める環境および体制構築―立ち上げと運営の試行錯誤―(原口 大輔)
- AI ロボット駆動科学時代の研究室とは?―大学・研究所子会社・スタートアップを渡り歩いて見えた組織設計論―(牛久 祥孝)
- 研究室は人でできている ―研究室立ち上げと運営を振り返って―(永谷 圭司)
- 高専における研究室立ち上げ ―教員としての実践と運営―(中西 大輔)
- 移動ロボット研究室の立ち上げと運営の実践―北海道科学大学での経験を踏まえて―(浪花 啓右)
- ロボット研究室の立ち上げと運営に関するアンケート分析―ロボット学会会員アンケートに基づく実態調査―(浪花 啓右)
【座談会】
- 座談会「PI どうでしょう」 ―研究室立ち上げの本音と実践―(日本ロボット学会編集委員会)
研究室を立ち上げるという経験は,研究者としてのキャリアにおいて極めて重要な転機であるにもかかわらず,その具体的なノウハウや実態が体系的に共有される機会は意外なほど少ない.着任が決まったらまず何をすべきか,限られた予算でどう環境を整えるか,学生指導の方針はどう定めるか――こうした問いに直面したとき,多くの教員は手探りで道を切り拓いていくほかない.先輩の背中を見て学ぶにしても,研究室運営の裏側は外からは見えにくく,相談しようにも同じ悩みを共有できる相手が身近にいないことも多い.
本特集では,「研究室をつくろう」と題し,国立大学,私立大学,高等専門学校,企業,スタートアップといった多様な機関で研究室を立ち上げ・運営してきた先生方の経験と知見を集めた.全9編の記事を通じて,研究室の立ち上げと運営の「リアル」を多角的に描き出すことを目指している.
まず,様々な立場・機関の先生方による解説記事では,研究室立ち上げの具体的な実践から,研究者としてのキャリアを通じて培われた運営哲学まで,幅広い視点からの知見が集められている.国公立大学・私立大学・高専・企業といった多様な環境での経験や,講座制と非講座制の違い,任期制を含むキャリアの歩み方など,一人ひとりの先生が異なるリアルを持ち寄っている.いずれも「研究室をつくるとはどういうことか」を問い直す,得難い視点を与えてくれるものである.
次に,ロボット学会会員68名を対象としたアンケートに基づく調査記事では,研究室の規模・設備・資金・業務バランスなどの実態を定量的に可視化した.「一人PI×学生11~20人」という最も典型的な運営形態の実像や,基礎研究費だけでは研究室運営が成り立たない現状など,数値として示される知見は,読者が自身の状況を俯瞰的に捉える助けとなるだろう.
さらに,座談会記事では,異なる機関の先生方がNGなし・遠慮なしの本音トークで,研究室立ち上げにまつわるお金,事務体制,周囲との関係構築について語り合った.飲み会のような雰囲気の中で飛び出す率直な言葉の数々は,経験者には深い共感を,これから立ち上げる方には貴重な見通しを与えてくれるはずである.
研究室をつくるという営みには,研究そのものとはまた異なる種類の創造性と試行錯誤が求められる.本特集が,これから研究室を立ち上げる方はもちろん,現在運営に悩んでいる方,そして新任の先生を迎える立場の方々にとっても,次の一歩を踏み出すための一助となれば幸いである.(浪花啓右 北海道科学大学)



