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日本ロボット学会誌44巻5号「集合的予測符号化による実世界マルチタイムスケール知能~認知発達・記号創発ロボティクスからSystem 0/1/2/3へ~」


 

「集合的予測符号化による実世界マルチタイムスケール知能~認知発達・記号創発ロボティクスからSystem 0/1/2/3へ~」特集について

日本ロボット学会誌44巻5号「集合的予測符号化による実世界マルチタイムスケール知能~認知発達・記号創発ロボティクスからSystem 0/1/2/3へ~」

 

【展望】

  • System 0/1/2/3:集合的認知システムの四重過程理論―集合的予測符号化が繋ぐ身体・脳・社会のマルチタイムスケール知能―(谷口 忠大)

【解説】

  • AI研究の潮流と集合的予測符号化(CPC)の展望(福島 俊一)
  • CPCの数理的理解―Shannon理論から集合的予測符号化へ(林 祐輔)
  • System 0(田中 一敏)
  • 知能を社会化する時間ダイナミクス―ランドスケープ・記号・集合記憶へのベルクソン的視座(平井 靖史)
  • ロボットにおける空間認知と場所の意味理解へ向けて(谷口 彰)
  • 時系列データの分節化と記号創発(長野 匡隼)
  • 計算論的精神医学の拡張:個体の推論変調から集合的病理の生成ダイナミクスへ(山下 祐一)
  • 感情発達ロボティクスと言葉の意味(日永田 智絵・宮澤 和貴)
  • CPC Spring Camp 2025学生体験記(片岩 拓也・久保田 はな・廣瀬 百葉)

 生成AIとロボティクスの急速な発展は,あらためて「実世界で知的にふるまう」とは何かを問い直している.本特集では,集合的予測符号化(Collective Predictive Coding; CPC)を手がかりに,身体,脳,社会にまたがる知能をマルチタイムスケールの現象として捉える新しい視座を紹介する.認知心理学の二重過程理論では,高速で直感的なSystem 1と,低速で熟慮的なSystem 2が区別されてきた.これに対してSystem 0/1/2/3の枠組みは,その手前にある身体の物理ダイナミクスや反射的応答をSystem 0,その先にある言語,文化,制度,科学などの集合的な記号創発をSystem 3として位置づける.すなわち,身体に埋め込まれた超高速の適応,個体内の知覚・行動ループ,言語を介した推論,社会の中で共有・更新される外的表象を,連続した知能の層として考える試みである.
 この見方は,認知発達ロボティクスと記号創発ロボティクスが探究してきた構成論的アプローチの自然な発展でもある.ロボットが身体を通じて世界を経験し,内的な世界モデルを形成し,他者との相互作用を通じて言葉や概念を獲得していく過程は,CPCが描く「個体の予測」と「集団の記号系」の往還そのものである.また,System 0からSystem 3へと一方向に積み上がるだけでなく,社会的に形成された言語や知識が,個体の注意,行動選択,身体設計のあり方を逆に制約するという循環も重要である.この循環を扱うためには,ロボティクス,人工知能,認知科学,心理学,哲学,言語学,文化進化,精神医学を結び直す文理融合的な議論が欠かせない.さらに,感情発達や内受容感覚,言葉の意味の形成を含めて考えることで,知能は単なる計算や制御ではなく,身体的・情動的・社会的な営みとして理解される.本特集では,理論,数理,身体設計,時間論,計算論的精神医学,感情と言語まで,多様な観点から,実世界マルチタイムスケール知能の可能性を展望する.(宮澤和貴 大阪大学)