
「人間とロボットの精神的なインタラクション」特集について
日本ロボット学会誌44巻6号「人間とロボットの精神的なインタラクション」
【展望】
- 人間とロボットの精神的インタラクションの哲学的基盤―技術哲学から人工共感(Silicopathy)へ―(浅田 稔)
【解説】
- 振る舞い,人格,価値観を通したロボットと人のかかわり(内田 貴久・港 隆史・石黒 浩)
- 責任あるロボティクス:デザイン思考による学際的アプローチ(翁 岳暄)
- なぜロボット工学における宗教?(トロヴァト ガブリエレ)
- ロボットの目にも涙(瀬島 吉裕)
- コンヴィヴィアル・ロボティクス―〈弱さ〉の相補性に基づくHRI デザイン―(岡田 美智男)
- ロボットはモラル・エイジェントとなりうるか?(大平 英樹)
- 「身体性人工知能」と「アート」を融合させたアザラシ型ロボット「パロ」によるウェル・ビーイングと非薬物療法(柴田 崇徳)
- 人間と福祉ロボットのインタラクション(武田 洸晶)
人工知能やヒューマン・ロボット・インタラクション研究の進展により,人間とロボットの関係は「機械の利用」から「精神的なインタラクション」へと大きく広がりを見せている.ロボットはこれまで組立工場や災害現場など,特定の場面で使用されてきた.そのため,ある程度専門的な知識や技術を持つ人間が,特定の作業に利用する事例が大半だった.しかし近年は,配膳ロボットやコンパニオンロボットなどが現れ,より身近な存在として日常生活に浸透しつつある.そのためロボットは,単なる作業支援や効率化の道具にとどまらず,対話や感情表現を通じて,人間の心理に影響を及ぼす存在となりはじめている.
配膳ロボットなどは,ある種機械的な作業に利用されるが,特別な知識などを持たない一般的な人々とのインタラクションを前提としており,人々に受容してもらえるようにデザインされている.協働ロボットや福祉ロボットなども,人間と直接触れ合ったりともに作業したりする中で,人間に受容してもらい,適切な対話を経て動作することが求められる.アンドロイドやコンパニオンロボットなどは,より対話に重きを置いたロボットとして開発され,対話相手の人間の感じ方を考慮した人間らしい,あるいは人間より受け入れやすいコミュニケーションのあり方を模索する研究が盛んである.介護や教育,メンタルヘルスの現場では,ロボットが孤独感を軽減したり学習意欲や安心感を高めたりする事例も報告されている.人間の受容や対話,果ては宗教といった,人間の精神に働きかける作用,精神的なインタラクションを考慮することで,ロボットはまた一歩,我々人間の過ごす日常への歩みを進めている.
本特集ではこのような背景を受けて,「人間とロボットの精神的なインタラクション」をめぐる最新の研究成果や実践事例を紹介するとともに,工学だけでなく倫理的・社会的な視点からその未来像を探る.本特集号が,人間とロボットの新たなインタラクションのあり方を示し,人間・ロボット共生社会に向けた議論を促進する契機となることを期待したい.最後に,本特集号にご寄稿いただいた著者の方々,ご協力いただいた編集委員ならびに事務局の方々に深く感謝申し上げる.
(武田洸晶 豊橋技術科学大学)



