今回,ウィーンに二回の出張(ICRA2026とARSO2026)の合間に国内での赤ちゃん学会学術講演会に参加という超ハードスケジュールをこなしました.その第一報として,ICRA2026の概報をお伝えします.
本年6月1日から5日まで,ウィーンのMesse Wien Exhibition Congress Center[写真1は会場玄関]で開催されたロボティクスとオートメーションに関する国際会議(ICRA 2026, International Conference on Robotics and Automation)[1]に参加しました.
初日の6月1日はワークショップとチュートリアルで,浅田自身は,ロボット倫理に関するワークショップ「2ND ICRA 2026 WORKSHOP ON ROBOT ETHICS[2]」に参加し,論文発表しました.東北大学の平田教授からの基調講演「Encouraging Human Challenge through Robotic Illusions: Motivation, Self-Efficacy, and White Lies」のあと,一般講演で,浅田は「Silicopathy: Generating Ethics through Pain in Embodied Artificial Systems”」と題する生成倫理の可能性の論文発表を行いました.その場では時間がなく質疑応答がありませんでしたが,発表後,Robohub.orgの方からメールで問い合わせがあり,人工痛覚について興味を持っていただき,1時間ほど議論を交わしました.
当日,夕刻から開会式があり,実行委員長のウィーン工科大学のMarkus Vincze教授から会議の概要が伝えられました.参加登録者は初日8765名と非常に多数です[写真2].また,展示会への面積が2587平米と巨大で,前回,米国アトランタのときの1700平米を超えると自慢していました[写真3].出展企業数は,中国が1位で69社で圧倒的です.日本からはわずか3社でした[写真4].次に,プログラム委員長のドイツ.カールスルーエ大学のTamim Asfour教授から論文投稿数と採択された論文数の発表がありました[写真5].全投稿数は4947編で,査読を経て,採択された論文数は1882編でした.採択率は40%を切っており,やや厳しくなってきてる感じでした.投稿された論文のキーワードが紹介され[写真6],1位から強化学習,深層学習と視知覚,模倣学習,運動と軌道の計画,深層学習の手法など人工知能の興隆を象徴するように学習のキーワードが目立ちました.国別の論文数については,みのつぶ短信第一回「論文発表は国と国の闘い?」[3]で意味がないといいつつ,気になるので紹介しましょう[写真7].第一位は中国で投稿数1685,採択数612で最多です.2位のアメリカは同じく,1153,517なのですが,アメリカからの発表論文の筆頭著者が中国人と思しきケースが多々有り,実質は中国人の発表数はこの数字より多いと思われます.このあと,レセプションがありましたが,あまりに多くの参加者により,食べ物はほとんど無く,ビールやワインで内外の研究者と語り合いました.
二日目は,午前中のパネル討論会「Panel 1 – From Humanoid Robotics Research to Startup Creation: The Role of Public Funding[4]」に顔出ししました.本パネルでは,長期的な基礎研究がどのように産業イノベーションやスタートアップ創出につながるのかが議論されました.主な事例として,欧州委員会による長年の支援を受けて発展した iCub プロジェクトから誕生したGenerative Bionics と,CEO主導の産業プロジェクトとして立ち上がったNeura Robotics が比較対象として取り上げられました。座長はイタリア技術研究所(IIT: Italian Insttute of Technology)の所長のGiorgio Metta氏でiCubの生みの親です.ミュンヘン工科大学のAlin Albu-Schäffer教授のスライドを示します.ヨーロッパの人口構成図で将来の労働人口の低減から次の10年後までに1000万台のロボットが必要と訴えています[写真8].このパネルはヨーロッパ内の話ではあるのですが,国際会議の観点からは,日本からのパネリストがいてもいい気がして,若干さみしい印象です.
論文賞の受賞候補者のプレゼンの最初のセッションがランチ前にあり,最初の論文は,台湾・国立陽明交通大学(National Yang Ming Chiao Tung University)のTaiらによるもので,食品すくい上げ作業におけるこぼれ低減を目的とした拡散ポリシー「GRITS」が提案されました.6種の学習後,10種の未学習物体に対して,取りこぼし率が低減されてる実験結果などが紹介されました[写真9].残り8件の発表はマニピュレーション関係,とくに医療応用関係が発表され,全9件のうち,台湾も含めて,中国人の発表が7件でした.
午後はプレナリーセッションの招待講演で,カリフォルニア大学バークレー校のKen Goldberg教授は,「A Tale of Two Cultures: Can Agentic Coding Close the Gap?[5]」と題する講演で,言語・視覚AIに比べてロボット操作は実世界データが圧倒的に不足していることを指摘し,その解決策としてシミュレーション,ワールドモデル,遠隔操作,実運用環境でのデータ収集を紹介しました.また,逆運動学やPID制御などの従来技術と,LLMによるコード生成を活用するAgentic Coding(Code-as-Policy)を組み合わせることで,実用的なロボット自動化と学習データ収集を両立する新たな方向性を示しました.写真10は講演の様子です.
本会議二日目の6月3日はToyotaのホームサービスロボットHSRに関連するGlobal HSR Forum: Shaping the Future of Service Robotics with HSRが開催され[6],玉川大学の稲邑教授を始めとする基調講演のあと,パネル討論会「How can we shape the Future of Service Robotics with HSR?」があり,パネリストの一人として参加しました.座長はミュンヘン工科大学のGordon Cheng教授で,他のパネリストはICRA2026の実行委員長のウィーン工科大学のMarkus Vincze教授を始めとして日米からの参加者でした.浅田からは,「Rethinking “Service” in Service Robotics」として,文化差を顧慮することの必要性を訴えましたが,他のパネリストはHSRの技術的な課題に関連するものが多かったように思いました.写真11は浅田の講演スライドの一枚です.
このフォーラムの開催中に2つ目のプレナリーセッションがあり,イタリア技術研究所(IIT: Italian Insttute of Technology)のBarbara Mazzolai教授が「Natural Revolution: Biological Principles for Frugal and SustainableRobotics」と題する講演を行いました.教授は,ロボットが社会に広く普及する未来に向けて,そのエネルギー消費の持続可能性を問い直しました.タコや植物,種子などの生物が示す省エネルギーな仕組みに着目し,身体構造や環境との相互作用を活用する分散知能の重要性を紹介しました.また,知能を中央集権的な制御ではなく身体や環境に埋め込み,周囲のエネルギーを活用することで機能を実現する新しいロボット設計の方向性を提案しました.より高性能なロボットだけでなく,地球環境と持続的に共存できるロボットの実現が今後の重要課題であると論じました.非常に大切な点だと思います.写真12は講演の様子です.この日は夕刻からImperial Nightと称した会議の晩餐会が市内のホーフブルク王宮であり,その様子を写真13から16に示します.荘厳な雰囲気のなかで多くの参加者との議論を楽しみました.
6月4日は会議がはじまるまえに,会議主催団体である米国電気電子学会(IEEE: Institute of Electrical and Electronics Engineers)のロボティクス&オートメーションソサイエティが企画しているヒューマノイドの歴史プログラムのインタビューを1時間ほど受けました.ロボカップのヒューマノイドリーグの初期のエピソードを始め,浅田自身の研究のはじまりなども説明しました.その後,競技会会場と展示会会場を視察しました.写真17は経路走行の競技の写真でビデオ1はその様子です.展示会の様子を写真18に,また中国のヒューマノイドRobot会社Uniteeのブースでの4脚Robotの動きをビデオ2に,さらに,グリッパー会社のTESOLLOの双腕マニピュレーションRobotの動きをビデオ3に紹介します.
今回の会議参加で,目立ったのは日本のビジビリティの低さでした.論文数.展示企業数,パネリスト数などです.なんとかしなきゃと思いながらホテルへの帰路でした.さて,本会議も終え,翌日6月5日の午前中の帰国便に搭乗予定でしたが,10時間以上遅れるとの通知がきて,これでは赤ちゃん学会に出られなくなるので,4日の夕刻出発の便に変更し,帰国した.このあとは,次回のみのつぶ短信で紹介します.
[1] https://2026.ieee-icra.org
[2] https://sites.google.com/view/icra2026-workshop-robot-ethics
[3] https://robogaku.jp/news/2019/pblog001.html
[5] https://2026.ieee-icra.org/attend/plenary-sessions/


















浅田稔
元会長,現在,大阪国際工科専門職大学 副学長,及び大阪大学先導的学際研究機構 共生知能システム研究センター特任教授





