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豊島岡女子学園中学校高等学校2025年度第2回キャリアイベント報告


豊島岡女子学園中学校高等学校2025年度第2回キャリアイベント報告

日本ロボット学会ダイバーシティ推進委員会主催にて、豊島岡女子学園中学校高等学校向けキャリアイベント「リコンフィギュラブルロボットを動かしてロボットプログラミングを学ぼう」を開催いたしました.

下記の通り報告いたします.


1.日時

2025年7月18日(金)、28日(月)~31日(木)9:00~17:00

第1回キャリアイベントに参加したもののうち希望者3名。

 

1日目 リコンフィギュラブルロボットに触れる。ハードウェアモジュールおよびソフトウェア開発環境について学ぶ。
2日目
3日目
4日目
自分たちのアイディアを形にする。研究室の教員および研究室の学生の助けを得ながら、ロボットのハードウェアおよびソフトウェアの開発を行う。
5日目 午前:前日までの続き・プレゼンテーション製作
午後:各自のロボットについての発表を行う。ラップアップ。

 

2.実施体制

企画担当:ダイバーシティ推進委員会

共同企画:豊島岡女子学園,東京大学工学系研究科知能機械情報学専攻情報システム工学研究室


3. 経緯

2023年冬に、情報システム工学研究室の全面協力により、ロボットをデザインし、実際に動かしてコンセプト動画を撮影するワークショップを実施した。このワークショップは非常に好評であり、生徒たちもアイディアを形にする経験を通して多くの学びがあり、成果を豊島岡女子学園の探究成果発表会や、U18RoboticsForumで発表をした。この時の経験を踏まえて、再び情報システム工学研究室の協力を得て、同研究室で研究開発を行っている教材用のロボットシステムを用いて新たに自分たちのアイディアを形にする体験ができるようワークショップを開催した。


4.内容
<1日目:リコンフィギュラブルロボットについて学ぶ>

ロボット教室の初日は、情報システム工学研究室の矢野倉助教により、プログラミングの基礎から開発環境の構築、そして実際にロボットを動かす体験まで、多岐にわたる内容が実施された。

午前中は、まず今回のロボットの紹介から始まった。過去の作例を提示し、ロボットの再構成可能な特徴を実演した。目の前でプログラムを組み、ロボットが実際に動く様子を披露することで、参加者の興味を引きつけた。その後、プログラミングの基礎としてif文、for文、while文といった制御構文について解説し、実際に動かしながら理解を深めた。続いて、開発環境の構築に移った。ワークショップ資料の紹介後、シェルやターミナルの概念からスタートし、OSの種類について説明。特に、Windows環境にLinuxを導入する仕組みであるWSLについて詳しく解説した。参加者にはWSLとVSCodeの導入を促し、UbuntuからVSCodeを立ち上げる方法を指導した。また、生成AIの種類や使い方についても触れ、Geminiを例に、不明な点があればAIに質問することの有効性を伝えた。Linuxの基本的なコマンドについても説明と練習を行い、サンプルをそのまま動かすだけでなく、自分で改良を加えることの重要性を伝えた。

午後の部では、午前中の内容を踏まえ、より実践的なプログラミングへと進んだ。参加者に「ロボットに何をさせたいか」「何を作りたいか」といった問いかけから始め、for文を使ったプログラミング演習を行った。エラーが出た際の対処法も学びの機会と捉え、フィボナッチ数列をfor文とwhile文で記述する課題に取り組んだ。リストや関数の概念についても説明し、フィボナッチ数列を返す関数の作成にも挑戦した。プログラミングの後は、いよいよロボットの操作体験である。ロボットの表示方法から始まり、SSH接続を通じてロボットモデルと実機を動かす体験を行った。参加者はポーズを作成し、ロボットを動かす演習を通じて、プログラミングが実際のロボットの動きに繋がることを実感した。最後に、参加者から「どんなロボットを作りたいか」というアイデアを募る時間となった。あっちむいてほいロボット、へび型ロボット、リズムに合わせて動くロボット、蜘蛛型ロボット、ダンスをするロボット、分子模型が動くロボット、ポケモンロボット、アルゴリズム体操ロボットなど、様々なユニークなアイデアが出された。

次回の講座に向けて、各自でイメージ図を作成し、共有することを確認して初日のプログラムは終了した。初日は講義形式の部分も多かったものの、参加者は静かに、そして熱心に実習に取り組んでおり、ロボット制作へのイメージを少しずつ膨らませることができた一日であった。

 

<2日目:ロボット組立、開発環境整備とロボット製作テーマの具体化>

ロボット教室の2日目は、開発環境の整備とロボットの組み立て、そして各自のロボット制作テーマの具体化に焦点が当てられた。この日から、情報システム工学研究室博士課程1年の杉原さん、修士課程2年の澤田さんがサポートしてくれた。

午前中は、まずWSL上のUbuntuのバージョンアップとROSの導入といった開発環境の整備から始まった。この作業と並行して、ロボット本体の組み立て作業が行われた。参加者は3Dプリンターで出力された部品のサポート材をニッパーや手で剥がす作業を体験し、保護メガネを着用して安全に配慮しながら電動ドライバーでネジ締めを行った。組み立てでは、ネジがうまく締まらない、部品が噛み合わない、部品の入れ忘れ、ゼロ点が合わないといった苦労が見られたが、各自で組み立てたパーツを他の参加者のものと組み合わせるなど、協力しながら作業を進めた。

昼休憩を挟み、午後は組み立てたロボットを動かすための設定と実演が行われた。WSL上のUbuntuでROSなどの設定を行い、SSH接続を通じてロボットにアクセスし、ROSを介してロボットを制御する手順を学んだ。参加者は矢野倉助教の資料を参照しながら、各自で設定を進めた。

その後、澤田さんと同研究室修士課程1年生の永田さんによって、ロボットを用いたカードゲームのデモンストレーションが行われ、お題に合わせて話をするというユニークな試みが行われた。

続いて、参加者それぞれのロボット制作アイデアの発表と具体化が行われた。ある参加者は子どものお世話をするロボットとして伝言を伝えたり読み聞かせをしたりする機能などに興味を持った。特に子犬のトイレトレーニングにおける犬の行動認識に興味を示した。別の参加者は「へびのような動きをするロボット」として、さらに3モジュールを追加してうねうねと動くロボットの実現を目指した。また別の参加者は「あっちむいてほいをするロボット」として、グーチョキパーを認識できる3本指のハンドの作成を構想した。これらのアイデアに対し、研究室の学生も交えて議論が行われ、各自のテーマを具体的に決定していった。このテーマ決定をもって、2日目の活動は終了となった。

 

<3日目:各自のテーマの沿った具体的な作業とプログラミング>

ロボット教室の3日目は、参加者各自が設定したテーマに基づき、具体的な作業とプログラミングに没頭した一日となった。

午前中は、それぞれのテーマに沿った作業が進められた。ある参加者はへび型ロボットのモジュール製作に集中し、別の参加者たちは自身のテーマで必要となるロボットの動きをPythonでプログラミングしていった。この段階では、繰り返し処理の実装や、ModuleLLMを用いた音声出力の試みなど、機能の実装にも取り組んだ。例えば、「あっちむいてほい」のランダムな動きや、トイレトレーニングロボットの動きなどが作成された。

午後は、午前中の作業の成果を試す時間となった。へび型ロボットは実際に形に組み上げられ、サーボモーターにIDが割り振られた。また、「あっちむいてほい」ロボットのテーマに取り組む参加者向けに、音声認識の導入方法が指導され、実際に試行錯誤が行われた。その後、ハンド製作の検討に入り、研究室の学生と共に、関節の数やサイズなど具体的な設計について議論を重ねた。トイレトレーニングロボットのテーマに取り組む参加者は、ロボットの動きをさらに作り込み、エサの投げ方についても検討を進めた。

午後の後半には、各テーマの進捗が具体的に見られた。へび型ロボットは少しずつうねうねと動き始め、前進のために摩擦(ゴムの貼り付け)を利用する工夫も試された。トイレトレーニングロボットでは、実際にAIBOを動かし、ロボットを組み合わせてAIBOが排泄した際におやつを投げるという一連の動作が試行された。また、「あっちむいてほい」ロボットのテーマに取り組む参加者は、じゃんけんから「あっちむいてほい」までの一連の動きを完成させ、研究室の学生と共にじゃんけんハンドの設計を検討。ジグが完成したと仮定して動きを試すなど、具体的な検証も行われた。

参加者たちは「終わりにしよう」という声がかかっても夢中で作業を続けるほど、自身のテーマに深く没頭していた。

 

<4日目:各自の改良・機能実装と成果発表>

ロボット教室の4日目は、各参加者がそれぞれのロボットの改良と機能実装に集中し、一部の参加者はこれまでの成果を発表した。

へび型ロボットに取り組む参加者は、動きをさらに改良し、少しずつ前進できるようになった。この日はその参加者にとって最終日であったため、これまでの活動をまとめたスライドを作成し、発表を行った。

「あっちむいてほい」ロボットに取り組む参加者は、この日までに用意された拡張パーツを活用してじゃんけんハンドを製作した。じゃんけんの実際の動きを作り込み、ハンドの認識機能の実装にも着手した。

トイレトレーニングロボットに取り組む参加者は、研究室の学生のサポートを受けながら、おやつを投げる動きの改良を行った。また、AIBOがトイレシートの上に一定時間いるかを画像処理でチェックする機能を実装。赤いスカーフを巻いたAIBOを認識するように改良し、AIBOがシートにいることを確認し、排泄後におやつを投げるという一連のトイレトレーニングの動きを完成させ、その様子を動画に収めた。

 

<最終日:各自の改良・機能実装と成果発表>

ロボット教室の最終日は、残りの参加者二名がそれぞれのプロジェクトを完成させ、成果発表会が行われた。

午前中から、両参加者は慣れた手つきでログインし、プログラミング作業に没頭した。「あっちむいてほい」ロボットに取り組む参加者は、午前中いっぱいプログラミングを続け、手の認識機能を組み込んだ。実際にロボットが話し、じゃんけんと「あっちむいてほい」を行うところまで仕上げた。トイレトレーニングロボットに取り組む参加者は、ロボットの腕を長くする改良を行い、エサをより丁寧に与えられるように動作調整を行った。

昼食時には、参加者と研究室の学生が再びロボットを用いたカードゲームの実験を行うなど、和やかな交流の時間も持たれた。

午後は、両参加者ともに成果発表のためのスライド作成に時間を費やした。フローチャートの作成や、これまでの活動をまとめたビデオ撮影など、入念な準備が進められた。

その後、報告会が開催され、岡田教授、矢野倉助教や研究室の学生が参加し発表を聞いた。「あっちむいてほい」ロボットの発表は、非常に立派で分かりやすいスライドで、参加者の感想も好評であった。教員からは、全体を含めたフローチャートを作成するとさらに良いというアドバイスや、ポーズ作成から認識に進むという手順がゲームとして成立しており非常に良いとの講評があった。トイレトレーニングロボットの発表では、参加者がロボットに触れる機会を求めて本教室に参加したこと、プログラミングに興味がなかったが「黒い画面」に触れる中で興味を持ったことなどが語られた。教員からは、今後も継続して開発を進めることや、ArduinoやM5Stackといった他のツールも活用すること、そして実際に犬で試してみることへの期待が寄せられた。両参加者とも、最終日まで熱心に作業に取り組み、充実した成果発表を行った。


今回のロボット教室は、参加者全員が大学3年生レベルの内容をこなし、成果を上げることができた。研究室の学生たちの協力も非常に大きく、参加者たちの「やりたいこと」をうまく引き出し、プロジェクトの推進に貢献していただいた。また、ある参加者がGeminiを効果的に活用し、プログラミングに役立てていた点は注目に値する。

初日は不安そうな表情を見せていた参加者たちも、日が経つにつれてロボット制作に深く没頭していった。最終日には「休憩」「昼食」「終了」といった声にも耳を傾けず、ひたすらプログラミングや作業を続けるほどであった。また、参加者たちが短時間で分かりやすいスライドをまとめ上げ、フローチャートも見様見真真似で作成するなど、そのレベルの高さがうかがえた。

本教室を通じて、参加者たちが工学やロボットに興味を持ち、「またロボットをやりたい」と語ってくれたことは、運営側にとって大きな喜びであった。将来の科学技術を担う人材が育つ可能性を感じさせる、実り多い機会となった。

参加者それぞれが、自身の興味に基づいた多様なテーマに取り組み、満足のいく形でプロジェクトを完遂できたことは、本教室の大きな成功要因であった。この成功は、矢野倉助教はじめ教員の方々の企画・運営における多大なご尽力、研究室の学生の皆様による技術指導と手厚いサポート、そして何よりも、熱意をもって参加してくださった皆様の探究心と努力の賜物であり、心より感謝申し上げる。

 

以上

ダイバーシティ推進委員・RSJ事業担当理事 星野由紀子