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学生編集委員会企画「第43回日本ロボット学会学術講演会オープンフォーラム:目的外使用ロボットコンテスト–未来のエンジニアが選ぶNo. 1–」


1.はじめに

 2025年9月2日,東京科学大学大岡山キャンパスにおいて,第43回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2025)のオープンフォーラムが開催された.本稿では,日本ロボット学会誌学生編集委員会が主催したオープンフォーラム「目的外使用ロボットコンテスト–未来のエンジニアが選ぶNo.1–」について報告する.


2.企画概要

 本企画は,子どもたちの視点からロボット技術の可能性や価値を再発見することを目的として企画された.ロボットが本来の使用目的を超えた様々なタスクに挑戦することで,創造的な発想を促し,ロボットの新たな役割について考える機会を提供することを目指した.競技には8チームが参加し,それぞれまずロボットの開発目的に沿ったタスクを実演した後,開発目的とは異なるタスクに挑戦した.観覧する子どもたちは,性能だけでなく創造性や魅力も基準として,最も心惹かれたロボットに投票を行った.本企画を通して,参加者どうしの新たな交流が生まれるとともに,ロボットの可能性を広げるヒントを得ることが期待される.また,観覧する子どもたちや若手研究者にとっては,ロボット技術への関心を高め,様々なロボットの知識を得るとともに,同世代の研究者との交流を通じて刺激を受ける機会となることが期待される.


3.企画内容

 本章では,今回企画したロボットコンテストの企画内容について説明する.

 まず,本コンテストの流れについて説明する.コンテストの冒頭には,各チームがそれぞれ自身らの持ち込んだロボットを紹介する時間を3分間設けた.ここでは,各自のロボットの得意なタスク,すなわち「目的に沿う」タスクを参加者自身が選定し,該当タスクを実行した.

 その後,本題である目的外のタスクを各ロボットが2回実行した.2回それぞれにおいて,異なる目的外タスク群をオーガナイザが準備し,各チームはそのタスク群の中から自身のロボットが実行できそうなタスクを選び,実行した.それぞれのタスク群を表1に示す.1周目に挑戦するタスク群Aは,各参加ロボットの目的に沿うタスクを集め,自分の目的に沿うタスク以外を選択するものとした.すなわち,自己紹介の際に他のロボットが実施していたタスクを,自身のロボットに実行させるということである.2周目に挑戦するタスク群Bは,タスク群Aよりも解釈の幅が広いタスクを用意し,競技者の自由な発想でのタスク実行を可能とした.

 

表1: 目的外タスク群

タスク群A(1周目)
各参加ロボットの目的に沿うタスク
タスク群B(2周目)
より幅の広いタスク
・しゃべる,おとをだす
・ものをつかむ
・ものをおく
・ものにはんのうする
・ものをなげる
・ものをつかむ
・ものをすくう
・およぐ
・ながれをつくる
・おとにあわせてうごく
・とぶ
・いどうする
・アピールする
・まわす
・はこぶ
・えがおにさせる
・あてる
・たつ
・たおす
・おどろかせる
・かわる

 

 全タスク終了後,子どもたちは事前に配布された3Dプリンタ製の投票コイン(図1)2枚を用いて,子どもたちが気に入ったと思うロボットに投票した.投票後,各チームの獲得ポイントが1コイン=1ポイントとして集計された.さらに,各タスク群について,そのタスクを選択したチームが他にいなかった場合,「Only1ポイント」として該当チームに3ポイントが加点された.獲得ポイントが最も多かったチームが最優秀賞,次点が優秀賞として表彰された.

 


図1: 投票用コイン


 本コンテストには,8チームから8体のロボットが参加した.参加したチームおよびロボット,各チームよりいただいた紹介文を表2に記載する.なお,各ロボットの写真は本オープンフォーラムの公式HP[1]を参照いただきたい.



表2: コンテスト参加ロボット一覧

チーム名(参加者名) ロボット名 紹介文
KAINA工房 KAINA 人間の腕を模したロボットアームです.人間と同じ大きさの7自由度のアームと11自由度の五指ロボットハンドを備えています.3Dプリンターで作成した軽量かつ頑丈なフレームにかっこいい外装を付けました.
Maquinista Hawk, Crow 今年(著者注:2025年)6月に行われたNHK学生ロボコンで実際に使用されたロボットです.今年は例年より機体サイズが大きいのが特徴です.二台でバスケットボールができます.一台がシュート担当,もう一台がパス担当です.
KINKI KNIGHTS Kyanite レスキューロボコンに参加したロボット.大きなアームでモノをつかみます.足はクローラー型なので,段差はかるがる超えられます.
Aqua Quadken 水中ロボコンに向けて開発を行ったタコ型の水中ロボットです.ヒレや足,スラスタなどをもち,環境に合わせて多様な動きができることが特徴です.陸上ではヒレとスラスタの風により移動を目指します.
チーム食べるロボット! 可食ロボット ゼラチンでできたグミのような食べられるロボットです.このロボットは体を動かして話すことができます.このロボットを人が食べることで,人が食べ物を食べるときの行動や気持ちを調べる研究を行っています.
ロボット技術研究会ACT BaseNoid BaseNoidは,初めてヒューマノイド製作を志す初学者が,ヒューマノイドの機械,回路,制御を一通り扱えるようになるためのプラットフォームとして開発された,教育用ロボットです.フィギュアの素体に着想を得て開発しています.
mechanekko ジャンプロボット XROBOCONに向けて開発していたロボットです(途中で開発打ち切りになったもの).エアシリンダの力でジャンプすることができます.大きな段差もひとっ飛び!
青山祐之介 ACT-OP Robocup humanoidリーグという競技向けにドイツボン大学Nimbroがオープンソースで公開していたデータをもとに製作している2足歩行ロボットです.最終的に2足歩行の動作検証用の機体として使用する目的で作成しました.

 

4.当日の様子

 中学生以下13名を含む計61名の観覧参加者が来場し,会場は終始にぎわいを見せた.冒頭のロボット紹介中に実施した「目的に沿う」タスクにおいて,各チームのロボットは設計どおりのタスクを実行しそれぞれのロボットの本来の使用方法を伝えた.しかしロボットハードウェアや制御システムの不調でうまく動作できなかったロボットもあった.

 目的外のタスクにおいてはQuadkenによる「たおす」(ぬいぐるみの攻撃)や,「Hawk, Crow」による「あてる」(ボーリング)など大きな動きをしたロボットが会場を盛り上げた(図2).また,可食ロボットによる「えがおにさせる」(漫才)実施中は参加者が小さなロボットが喋る様子を温かく見守っていた(図3).各チームの開発者らはすでにあるロボットの機構をうまく応用したりプログラムを組み直したりすることで目的外タスクを実行し,ロボットの魅力のアピールに取り組んだ.各ロボットが出番のたびに異なるタスクを実施したことで,参加者は飽きることなくそれぞれのロボットの周りに集まり,ロボットが動く様子を熱心に動きを見届け続けていた.

 


図2: Quadkenの説明を聞く参加者


図3: 可食ロボットを楽しむ参加者

 

5.コンテスト結果

 ロボットの目的外タスクへの挑戦が終了した後,参加者は最も「すごい」「面白い」と感じたロボットに投票を行った.

 投票の結果,Maquinistaの「Hawk, Crow」が24票および「Only1ポイント」6ポイントを獲得し,合計30ポイントで最優秀賞を獲得した.また,KINKI KNIGHTSの 「Kyanite」が23票および「Only1ポイント」6ポイントを獲得し,合計29ポイントで優秀賞を受賞した.両者の得票差はわずか1票であり,僅差での決着となった.

 その他のロボットにも多くの票が集まり,来場者はそれぞれに楽しみながら投票に参加している様子が見られた.


6.参加者の声

 本章では,後日実施したアンケート結果を振り返り,本企画の評価と今後に向けた考察を行う.

 今回のロボコンでは特に,「競技終了後に競技参加者と観覧参加者との交流の場を設けていた点が良かった」「最後にロボットに触れられたり質問できたのが良かった」「エンジニアの熱意が間近で伝わってきて良かった」「上手く動かなくて当然,上手く動けばラッキーという雰囲気で温かい交流の場となった」など,密でリアルな交流を評価する声が多くみられた.これは本ロボコンの企画時に話し合っていた運営側の理想的な状態であり,アンケート結果からも今回のロボコンは大成功であったと評価できる.特に熱心にロボットエンジニアに質問をする子どもたちが多くみられ(図 4),本ロボコンを開催した意義を強く実感した.

 


図4: 競技参加者と観覧参加者との交流の様子


 このほかにも様々な意見が寄せられた.本ロボコンでは,子どもたちの観覧は保護者との参加を推奨していたこともあり,保護者の視点からは,子どもの好きなものや反応を間近で見ることができて良かった,といった声もいただいた.

 また,実際にロボコンの運営経験のある方からは,「目的が異なる動きをさせたことが面白い」との感想が寄せられた.一般的なロボコンでは全チームが同じルールのもとで競技を行うが,本企画では「目的外使用ロボットコンテスト」という新しい概念を提案できたこと自体にも価値があり,このような新しい視点のロボコンが今後も生まれていくことが期待される.

 競技参加者からは,「出場のハードルが低く,気楽に参加できるロボコンであったことが良かった」という声もいただいた.初開催で未知な点が多い中でも,それを気楽さとして受け止め参加してくださった競技参加者の皆様には深く感謝したい.開催側としても,多くの競技参加者にご参加いただけたことは大変喜ばしいことであった.

 一方で,学会イベントであるため平日開催となったことや,想定より多くの観覧参加者にご来場いただいたことで観覧スペースが十分でなかったことなどが今後の課題として挙げられた.学会のオープンフォーラムとしてロボコン形式の企画は比較的珍しい試みであり,今後様々な団体が新しい企画を検討する際の参考になれば幸いである.


7.今後の展望

 本企画では,子どもたちの視点からロボット技術の可能性や価値を再発見することを目的として, 「目的外使用ロボットコンテスト–未来のエンジニアが選ぶNo.1–」を開催した.本企画は,ロボット本来の目的とは異なるタスクにチャレンジすることを競技として催すという初めての試みであったが,多くの競技参加者および観覧参加者の参加を得て開催することができた.当日は終始盛況であり,参加者からも好意的な反応が多く寄せられた.本企画は,競技参加者にとってはロボット技術の多様性や創造性を再発見する機会となり,観覧参加者,特に小中学生にとってはロボット開発に身近に触れる貴重な体験の場となったと考えられる.このような体験を通して,ロボティクスの社会的な魅力を広く伝えることができたと考える.

 一方,本企画では競技参加者の多くが科学大の学生であり,競技参加者の多様性という点では課題も残った.今後は,SNSや動画配信などによる事前広報を強化し,より多様な競技参加者の参加を促していきたい.

 また,本企画では開催地域での広報活動や集客の工夫により,多くの観覧参加者に来場いただくことができた.今後は年次開催も視野に入れ,継続的な運営体制の構築に向けて段階的な引き継ぎや共同開催を検討する.本企画で得られた経験と知見を活かし,ロボット文化の醸成に貢献していきたい.

 

参考文献

[1] 2025 RSJオープンフォーラム OF13 目的外使用ロボットコンテスト –未来のエンジニアが選ぶNo.1– 【観覧参加者向けページ】 , https://sites.google.com/view/rsj2025-open-forum-studentedit/audience

 

新川 馨子 (Kaoruko Shinkawa)

2025年電気通信大学大学院情報理工学研究科機械知能システム専攻博士前期課程修了.同専攻博士後期課程在学中.アンドロイドの遠隔操作システムの研究に従事.(日本ロボット学会学生会員)

 

原 拓己 (Takumi Hara)

2025年京都大学大学院情報学研究科修士課程修了.修士(情報学).現在,同研究科博士後期課程在学中.深層予測学習を用いるロボット制御の研究に従事.日本機械学会正会員.IEEE学生会員.JSPS特別研究員.JST ACT-X個人研究員.(日本ロボット学会学生会員)

 

斎藤 天丸 (Takamaru Saito)

2023年東京工業大学工学院機械系機械コース修士課程修了.東京科学大学工学院機械系機械コース博士後期課程在学中.高齢者の歩行を支援するロボット技術を用いたデバイスの開発に従事.

 

山本 雄大 (Yudai Yamamoto)

2023年東京農工大学工学部機械システム工学科卒業.現在,同大学大学院生物システム応用科学府一貫制博士課程在学中.スポーツにおける靭帯の弾性活用および非侵襲的な靭帯伸張計測の研究に従事.日本機械学会学生員.(日本ロボット学会学生会員)

 

水谷 彰伸 (Akinobu Mizutani)

2023年九州工業大学大学院生命体工学研究科博士前期課程修了.修士(工学).現在,同研究科博士後期課程在学中.ホームサービスロボットの記憶を取り扱う,脳の機能を模倣した人工知能の研究に従事.電子情報通信学会・IEEE学生会員,RoboCup @Home Technical Committee Member.(日本ロボット学会学生会員)

 

袴田 遼典 (Ryosuke Hakamata)

2023年東京工業大学工学院機械系ESDコース修士課程修了.東京科学大学工学院機械系ESDコース博士後期課程在学中.フライキャスティングの原理を応用したマニピュレータの開発に従事.日本機械学会正会員.JSPS特別研究員.(日本ロボット学会学生会員)

 

浪花 啓右 (Keisuke Naniwa)

2020年大阪大学大学院博士課程修了,博士(工学).現在北海道科学大学,工学部機械工学科准教授.主に災害対応ロボット,バイオミメティクスロボット等の研究に従事.本オープンフォーラムにおいては運営とりまとめを担当.(日本ロボット学会正会員)