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学生編集委員会企画:第38回日本ロボット学会学術講演会レポート(一般セッション:サービスロボット(1/2))


執筆日 2020年10月15日
兀下 敦史


 2020年10月9日から11日にかけて開催された第38回日本ロボット学会学術講演会のセッション参加レポートをお届けいたします.今回はオンライン開催という普段の講演会とは違ったもので私自身も楽しみにしながら参加させていただきました.


 今回,私が担当したのは,2日目の10日に行われたセッションの1つである「サービスロボット(1/2)」です.初日にも,サービスロボットに関するセッションがあり,話を聞いていく中で様々な種類があり,私たちの生活を支えることのできる重要なものであると感じました.前置きはこのぐらいで早速レポートの内容に移ります.


 まずは,セッションの内容について簡単に紹介いたします.全部で5つありました.
 1件目は,川田テクノロジーズ(株)による「軽作業のための小型軽量双腕ロボットの開発」です.中小事業所向けの箱詰め作業ができるロボットについてでした.実際の現場で使用してもらうために,作業性とコストのバランスが考えられている設計で今回はお中元などでよくある350ml缶を詰める実験をおこなっていました.
 2件目は,(株)アールティおよび千葉工業大学・早稲田大学の学生らによる「人型協働ロボットSciurus17を用いた食器片づけロボットの開発」です.ロボット自身がテーブルの上にある食器を片付けるというものでした.今回は皿,コップ,スプーンに絞って実験していました.
 3件目は,埼玉工業大学による「浴室清掃(風呂掃除)ロボットの概要」です.浴槽だけでなく,浴室全体を掃除できるロボットで,水圧で掃除するような形でした.早洗いコースや丁寧コースなどのコース選択もできるそうです.
 4件目は,湘南工科大学による「ROSを用いた独立2輪駆動型移動ロボットの人物追従」です.ロボット自体が大学の学科横断型学修プログラムで作られたものであり,複数のセンサを使用することによって対象の人物を感知し,対象の人物に一定の距離で追従するための方法についての説明がありました.
 5件目は,名古屋工業大学による「深層学習による物体認識とVSLAMを併用した屋外環境での駐車車両位置推定」です.目的は屋外での車両検査ロボットの初期位置を設定するためのもので,今回は目標車両の位置推定について行っていました.


 この中で特に興味を持った1件目の「軽作業のための小型軽量双腕ロボットの開発」と2件目の「人型協働ロボットSciurus17を用いた食器片づけロボットの開発」について詳しくレポートしたいと思います.


[軽作業のための小型軽量双腕ロボットの開発](川田テクノロジーズ(株))

 現在,日本の社会問題の1つとして,少子高齢化というものがあります.そのため,労働力不足という問題があり,それを補うために様々な現場にロボットが導入され,工場の自動化などが益々行われていっていると思います.    

 しかしながら,特に人手不足と考えられる中小事業所においては,ロボットの導入があまりされていないとのこと.その理由としては,作業性とコストのバランスを満たすロボットがなかなか存在しないからだといいます.そこで今回,川田テクノロジーズが提案したのが,そのような中小事業所の向けのロボットとして,今回は軽作業の1つである箱詰め作業のできるロボットでした.

 

図1 小型軽量双腕型ロボット(予稿原稿[1]より転載)


 今回の開発されたロボットは図1のようなものです.腕が2つついており,大きさは全長530mmと新聞紙程度で重さは14kgとコンパクトなロボットであり,あまりスペースが取れない場所においても対応することができそうでした.

 

図2 箱詰め実験の様子(予稿原稿[1]より転載)


 そして今回の実験として,お中元などでよく見る飲料缶の箱詰めの様子を行っていました(図2).安定的に缶をつかみ,箱に丁寧かつ正確に入れていく様子を見ることができました.1箱を作り終えるまでの時間は約30秒とのことで,人が行うよりも速いスピードで行うことができているような気がしました.ロボットのコスト的にもパートタイマの人件費2年分のコストぐらいまでに抑えることができているそうです.
 実際の現場で使ってもらうための工夫が多くあり,今回は箱詰め作業だけでしたが,他の作業もできるロボットやシステムが開発されていけば,今までロボットの導入が難しかった場所においても,どんどん導入がされていくようになり,労働力を補うことが簡単にできるようになると感じました.


[人型協働ロボットSciurus 17を用いた食器片づけロボットの開発]((株)アールティ, 千葉工業大学,早稲田大学)

 こちらの研究は先ほどの研究とは違い,生活空間を想定したロボットの内容でした.今回開発されたロボットは,食器を片付けるロボットであり,図3のようなものです.

 

図3 食器片づけロボット(予稿原稿[2]より転載)


 ロボットの構成としては,「Sciurus17」という上半身ヒューマノイド型ロボットに対して自律移動台車を取り付け,さらにハンドの部分を新たに作成したものに変更していました.動きとしては,キッチンからダイニングへと移動し,テーブルの上にある食器を片付けた後,キッチンに戻るというものです.今回の食器としては,皿とコップとスプーンに絞っていました.
 今回の発表は,食器の認識と把持に絞っての内容でした.食器の認識についてはRGB画像と深度画像から3次元点群を作成し,食器事の点群に分けた後,それぞれの点群と元々準備されていた食器の特徴量と照らし合わせることによってどの食器であるかを判断していました.把持については食器の種類ごとにどのように持つのかを点群情報から計算する方法が考えられていました.

 

図4 食器片付け実験の様子(予稿原稿[2]より転載)


 実験としては,2019年の国際ロボット展の会場で行われたそうで,16回中15回すべての食器を片付けることができたそうです(図4).1つ1つの食器に対して,落とさないように丁寧に掴んで,収納していました.
 今回は皿とコップとスプーンのみでしたが,今後は検知できる食器の種類や発表になかった移動などがより複雑な環境でもできるようになれば,家だけでなく,飲食店などでの活躍もできるのではないかと個人的には思いました.


 以上,「サービスロボット(1/2)」のセッションレポートでした.私は,このレポートのみの担当ですが,他にも様々なレポートが用意されていますので,気になった方はぜひご覧ください.


[講演プログラム]
2K2_GS15:サービスロボット(1/2)

[1] 2K2-01 軽作業のための小型軽量双腕ロボットの開発
○星野 由紀子(川田テクノロジーズ(株)),齊藤 墾(川田テクノロジーズ(株)),吉田 啓睦(川田テクノロジーズ(株))※吉は「つちよし」,カヤオ クリスチャン・デウス(川田テクノロジーズ(株)),チャンドラ ハディ(川田テクノロジーズ(株)),川端 健太郎(川田テクノロジーズ(株)),立山 義祐(川田テクノロジーズ(株))

[2] 2K2-02 人型協働ロボットSciurus17を用いた食器片づけロボットの開発
○犬飼 健二((株)アールティ),平間 翔大(千葉工業大学),川又 健太(千葉工業大学),伊藤 杜人(千葉工業大学),津野 太希(早稲田大学),中川 友紀子((株)アールティ)
[3] 2K2-03 浴室清掃(風呂掃除)ロボットの概要
○橋本 智己(埼工大)
[4] 2K2-04 ROSを用いた独立2輪駆動型移動ロボットの人物追従
○池田 安理風(湘南工科大学),尾﨑 文夫(湘南工科大学)
[5] 2K2-05 深層学習による物体認識とVSLAMを併用した屋外環境での駐車車両位置推定
○史 智文(名工大),田口 亮(名工大)