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第163回 ロボット自律移動の理論と実践(実施報告)


第163回ロボット工学セミナー実施報告
「ロボット自律移動の理論と実践」


日時:2025年12月2日(火)9:00-18:00
会場:オンライン
参加者:179名
オーガナイザ: 松﨑成道(トヨタ自動車株式会社)
セミナーURL:https://www.rsj.or.jp/event/seminar/news/2025/s163.html


セミナー概要

ロボットの自律移動技術は、移動ロボットがアプリケーション上で種々の価値提供を行うための基盤的技術です。複雑な環境への対応や社会的常識を考慮した真に知能的で頑健なふるまいは、高度な環境認識、計画、制御の複合によって実現されます。また、その実世界実装には、技術面のみならず事業化、生産の観点からの知見も必要です。
本セミナーではこれらの技術について最前線で研究を進める研究者の皆様に、その研究・開発事例とこれから解くべき課題についてご紹介いただきました。


第一話 ロボットナビゲーション基盤モデルの学習

Toyota Motor North America/ カリフォルニア大学バークレー校 廣瀬 徳晃

大量のデータを用いたロボット自律移動の基盤モデルの学習方法について講演いただきました。前半では、ロボットのオドメトリ等に紐づかない動画像を含めたデータを自律移動の学習に利用するための方法論をご紹介いただきました。後半では、近年マニピュレーションタスクで研究が進むVision Language Action Models (VLA)を自律移動に応用することで、単なるゴールへの移動だけでなく言語指示に沿ったふるまいが創出されるという最新の事例をご紹介いただきました。これからますます活発に研究されるであろう学習ベース手法の先端研究に触れるエキサイティングなセミナーのスタートとなりました。


第2話 自律移動と最適制御 ― 大域計画, 障害物回避, 機械学習, 潜在空間, 伝統的な制御の統一的な理解のために

千葉工業大学 上田 隆一

我々が一般に同一視しない各問題を最適制御問題に一般化するという挑戦的なテーマで講演いただきました。「好ましくない状態xを、力uを加えて好ましい状態の集合X_fに持っていく」という制御の視点で、移動ロボットの経路計画問題からVLA等の機械学習まで種々の問題を捉えなおすというトピックは個人的にも新たな学びとなりました。特に、一般的な探索ベースの手法で問題になりがちな経路のチャタリングなどを、制御の枠組みで設計するという考え方は今後の研究開発にも活きそうなものだと感じました。


第3話 モデル予測制御から組み上げる自律移動ロボット

名古屋大学 / CyberAgent AI Lab 本田 康平

モデル予測制御(MPC)に基づく移動ロボットの制御について、理論から実世界実装の例までをご紹介いただきました。理論に関しては数式を交えた骨太な内容を大変わかりやすく解説いただきました。また、実用上の性能向上のための設計のポイントや、レース競技の高速走行において発生する実問題とそれを解決するための発展手法まで踏み込んだ説明をいただきました。さらに近年の研究の動向を踏まえたMPC研究の進みうる方向まで展望をお話しいただきました。充実した内容で、メモも忘れて聞き入るほど楽しい講演でした。


第4話 人間共存環境におけるロボットの自律移動

東京大学 山下 淳

特に人共存環境におけるロボットの自律移動のためのセンシング、モデリング、経路計画技術について多様な研究例について講演いただきました。個人的には、特に近年の混雑環境における自律移動で主流となっている強化学習に基づく研究に興味を持っており、個人だけでなく歩行者グループや異なる群衆の移動ポリシーを考慮した手法などを学ばせていただきました。ご自身の研究にとどまらず、自律移動にまつわるトピックを広く概観して技術を紹介していただき、とても勉強になる講演でした。


第5話 人共存型スマートモビリティの協調移動技術

東京大学 亀﨑 允啓

前話の山下先生と同じく人共存環境における自律移動についてご講演いただきましたが、特に人への働きかけを伴う”アクティブ”な戦略を持つモビリティの実現に向けたユニークなアプローチをご紹介いただいた。同調的行動原理では人共存環境での自律的行動には不十分で、主張的行動原理を併せ持つ必要があるという問題意識は非常に共感を覚えるところでした。それを実際のロボット動作として実現し評価する緻密なシステムと実験の設計に感銘を受け、自身としても研究に活かしていきたいと感じました。


第6話  四脚ロボットの学習制御と自律移動システムへの統合

千葉工業大学 入江 清

四脚ロボットを用いた自律移動に関する近年の研究開発についてご講演いただきました。前半ではつくばチャレンジに向けた研究についてご紹介いただきました。また、後半ではよりチャレンジングな不整地環境における自律移動の研究をご紹介いただきました。どちらも技術面だけでなく試行錯誤の過程や失敗例もたくさん紹介いただき、とても意義深いものと感じました。セミナーも終盤ながら、四脚ロボットやつくばチャレンジに自分もトライしてみたいと感じさせるとても楽しい講演でした。


第7話  家庭用ロボットカチャカの自律移動機能について

株式会社Preferred Robotics 寺田 耕志

Preferred Robotics社で製品化されている自律移動ロボット「Kachaka」のSLAMや環境認識、経路計画等のアルゴリズムについてご紹介いただきました。SLAM等の基礎的な理論から、実践的な地図拡張・更新の背景となる設計等についてカバーされた学びの多い内容でした。さらに、「Kachakaができるまで」と題して、企画から開発、製造、販売に至るまでのプロセスとその中での経験に基づく知見をご紹介いただきました。ロボットベンチャーならではトピックを盛り込んだ充実した講演で、セミナーの最後を締めていただきました。


まとめ

本セミナーは7名の講演者の皆様に、自律移動に関する幅広いトピックについてお話しいただきました。自律移動技術の最先端に触れられる大変充実したセミナーだったと思います。大勢の聴講者の皆様にご参加いただき、9時から18時という長丁場にもかかわらず最後まで活発な質問・議論をいただきました。オーガナイザながら時間を忘れて講演を楽しませていただきました。講演者、参加者の皆様に改めて御礼申し上げます。

最後に、ロボット学会事務局の村上様にはセミナーの円滑な進行に多大なるご助力をいただきました。ここに感謝を申し上げます。

以上