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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2000Business〈企業の研究開発〉蒸気発生器伝熱管歩行ロボット(MR-III)開発


中舎 修咲三菱重工業(株)

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

Development of Steam Generator Tube Sheet Walking Robot "MR-III" and the Present State of the Automatic Eddy Current Test System Shusaku NAKASHA, Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.

1. はじめに

当社は,原子力発電所において,保守・補修に寄与する様々なロボット及びシステムの開発を行ってきました。中でも原子力の中枢部の1つである蒸気発生器(以下S/Gと言う)には伝熱管が,1S/G当り約3400本が内装されており,定期検査毎に,この全数を全長にわたりECT探傷検査が実施されています。当社では,検査作業工程短縮と作業被曝線量の低減及び省人化を狙いとして,従来の約2倍の早さで遠隔全自動ECT探傷検査が可能なS/G伝熱管歩行ロボット・MR-III(伝熱管4本同時探傷システム)を実用化しました。(図)
図 MR-III 全体構成概念図(参考図)
図 MR-III 全体構成概念図(参考図)

2. 課題とその成果

S/G伝熱管歩行ロボット(MR-III)には,(メカ的能力向上)とそれに伴う(制御システム向上)の2つの課題があります。
(メカ的能力向上のための課題)
(1) 従来2本同時探傷機構であった構造を4本同時探傷構造とするために,各部品の小型・軽量化を図る。プローブの送り速度を高速対応とする。
(2) プローブ送り方式を4本独立駆動方式とする。
(制御システム向上のための課題)
(3) 制御システムを4本同時全自動システムとし,位置決め精度を向上させる。
本課題の実現化にあたり,4本同時探傷を行うためには,MR-IIIの歩行バランスに苦慮し,特に,キャリッジ部の小型及び軽量化を図る必要がありました。試作試験を繰り返し,モックアップ確証試験を経て,成果として,プローブ送りを0.1~1500mm/sec(可変)の広範囲の速度で送り込むことが可能となりました。
更に,4連での歩行と位置決め精度の向上した全自動ECT探傷が確証されました。(写真)
写真 MR-III本体
写真 MR-III本体
本システムの現状での特徴は,以下の通りとなります。
(1)建屋外コンテナからの遠隔集中自動制御.
(2)4本の伝熱管を同時探傷.
(3)検査データの収録や管理の自動化.
(4)光ファイバケーブルの使用による検査データの品質向上.

3. おわりに

蒸気発生器伝熱管歩行ロボット(MR-III)及び全自動ECT探傷システムは,PWR型原子力発電所の定期点検合理化の一環として開発され,作業員の被曝線量の低減を実現することができました。
現在,原子力プラントに実導入されています。