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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1976Integration, Intelligence, etc.〈インテグレーション・知能ほか〉ボルト自動締緩ロボット


烏野 武日立製作所中央研究所
江尻 正員日立製作所中央研究所
徳永 赳日立製作所多賀工場

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

視覚と触覚を持った自動機械の先駆けとして,1973年,コンクリート型枠用のボルト自動締緩ロボット(図1)を開発し,稼動させた。
図1 ボルト自動締緩ロボットの構成
図1 ボルト自動締緩ロボットの構成
これは,電柱用や建築用のパイル・ポールを製造する際,液状のコンクリートを型枠に注入する前に型枠に並んでいるボルトを締結したり,固化したあと型枠から取り出すためにボルトを緩めたりするロボットである。その特徴は
  1. 移動する型枠の側面をTVカメラで連続監視し,次々と視野に入ってくるボルト,リブ,タイヤを実時間で高速に認識する視覚技術(図2)
    図2 視覚認識の原理(窓枠法)
    図2 視覚認識の原理(窓枠法)
  2. 視覚による認識結果を触覚によって再確認し補完する技術
  3. リブなら腕を小さく,タイヤなら腕を大きく逃がし,ボルトならその移動に追従しつつこれを締緩するというように,外界の状況に応じて異なった動作を実行させる技術

にある。このロボットは,視覚・触覚を用いた最初の工業用知能ロボットとしてとくに米国の学会や産業界から高い評価を得た。また,この視覚技術は,簡易で高速な標準位置認識手法(窓枠法)へと発展し,その後のマシンビジョンでの基本技術の一つとして,産業界で広く実用された。

  受賞 1974年 米国IR-100 Award受賞, 1978年 米国Pattern Recognition Society論文賞受賞, 1982年 米国生産工学会:過去半世紀における傑出技術賞(1973年度分)に選定