日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1991Integration, Intelligence, etc.〈インテグレーション・知能ほか〉人間との協同作業を特徴とする遠隔作業ロボットシステム
佐藤 知正 | 電子技術総合研究所 |
松井 俊浩 | 電子技術総合研究所 |
平井 成興 | 電子技術総合研究所 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
本研究では,人間とのロボットとが密に連携をとる協同作業方式を特徴とする知的遠隔作業システムを提案・構築し,その効果を化学実験により示している.
実現された遠隔作業システムは,遠隔作業における人間とロボットの望ましいかかわり方として,協同作業方式を提案するものである.この協同作業方式においては,作業手順の生成とその実行に関し,人間とロボットの役割が動的に変化することが第一の特徴となっている.すなわち従来は人間が作業手順を作成しロボットがそれを実行するという固定的形態をとっていたが,協同作業では,人間も作業実行に参画しまたロボットも作業手順作成に関与できる.このように作業手順の作成と実行が有機的に結合されているのが第二の特徴である.すなわち,従来のスーパーバイザリ方式においてはバッチ処理であったのが,本論文の協同作業ではインタラクティブ処理的になっている.
このような人間とロボットとの協同作業を可能とするための作業システムとして,本研究では,(1)協調操縦システム,(2)遠隔作業向け知識ベースと,(3)操縦行動理解システムを統合した知的遠隔作業システム(MEISTER)を構築した.(1)協調操縦システムでは,例えばロボットの手先を常に水平に保つといった自動的に働く拘束動作が,人間の操縦動作に重畳して利用できるようになっているなど,プログラム動作と操縦による操作動作とが加味された効果的な遠隔作業が実施される.(2)の遠隔作業向け知識ベースには,典型的な作業法やその実施に必要となる作業データが,対象物ごとに体系的に格納されており,操縦者はシステムとインタラクティブに対話しながら,不足データなどを補いつつ作業を実施することができる.(3)の操縦行動理解システムは,その知識ベースの管理を可能とする働きを担い,たとえ操縦動作によって対象物がPick&Placeされても,データベースの更新が自動的になされる.これらのシステムを統合した知的遠隔作業システム(MEISTER)によって,サンプル資料の粉砕や炎色反応をふくむ一連の化学実験が実施され,その効果が実証された.
第6回 (1992年)日本ロボット学会論文賞受賞