日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1976Manipulation〈マニピュレーション〉人工指による物体把握の力学
花房 秀郎 | 京都大学工学部 |
浅田 春比古 | 京都大学工学部 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
ロボットハンドなどの人工指による物体の把握を力学的に解明し、安定把握の概 念を導入するとともに、物体形状に適合したハンドの構造と,その制御方式につい て理論的な根拠を確立した
まず,把握状態にある物体に外力が作用して把握姿勢にずれを生じたとき、物体 に加わる指先力の総和が,物体を元の状態に復帰させる方向に作用して、一定の把 握状態を維持しようとするときに,その把握が安定把握であるとして、そのための 条件を明らかにした。
この安定性を判定するために,物体把握の状態における指の開き量によって定ま る把握系のポテンシャル関数を導入し、これが極小値をとる状態での把握が安定な 把握であることを示した。
3本指のハンドによる平面物体の把握について検討し,安定把握を実現する手順 を検討した。視覚触覚などのセンサーを用いて適応的な把握を行なうには、物体形 状の情報を得てポテンシャルの極小となる状態へハンドを制御すればよく、把握動 作の適応制御への見通しが得られた。また,ハンドの構造と物体の形状によっては 必ずしも把握系ポテンシャルの極小値が存在せず、中立安定または不安定な把握と なることがあり,安定把握を実現するためには物体形状に適合したハンドの設計が 必要である。3本指のハンドについては,2本が連動され1本が独立に駆動される ものが安定把握の観点からは良好なことも示した。
1978年 計測自動制御学会論文賞受賞