日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1983Manipulation〈マニピュレーション〉関節形ロボットアームの冗長性の解析とその優位順位を有する作業への応用
花房 秀郎 | 京都大学 |
吉川 恒夫 | 京都大学 |
中村 仁彦 | 京都大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
冗長マニピュレータの運動分解の問題をヤコビ行列の零空間への写像問題となることを明確にし,冗長性の利用を複数作業間に優先順位をもつ問題として定式化した。さらに,マニピュレータの障害物回避制御に応用し,非人間型マニピュレータであるUJIBOTを用いて実験を行い,理論の検証をおこなった。世界的に冗長マニピュレータを"Task Priority"を用いて制御するパラダイムの先駆となった。この論文の一部は国際会議論文として,はじめに関連論文[1]として発表され,さらに後に完全な形で関連論文[2]として英語で発表された。関連論文[2]は,国際的に冗長マニピュレータに関する論文において頻繁に引用されてきた。この研究はオンライン制御を目的とした局所最適化による冗長性の解法であるが,その後,オフラインの大域的最適化による冗長性の解法に発展した関連文献[3]が発表された。これはPontryaginの最大原理を用いた冗長性の大局的な最適解法を世界に先駆けて確立したものである。冗長マニピュレータの問題の特殊性を用いて,最大原理が帰着する二点境界問題の境界条件を移動できることが明らかになり,これによって冗長自由度の数だけの境界条件を一端に持たせ,残りの自由度の数だけの境界条件を他端に持たせることで,実用的な計算量で最適解を得ることが出来ることを示した。この論文は同時期に関連文献[4]として国際会議で発表され,その後関連論文[5]として出版された。この論文は国際的な冗長マニピュレータに関する論文にはしばしば引用され,IEEEの"Robot Control," (Eds. M.W. Spong, F.L. Lewis, and C.T. Abdallah,IEEE Press, 1993.)にも収録された。
1985年 計測自動制御学会論文賞受賞