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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1986Manipulation〈マニピュレーション〉複数のロボット機構による協調的あやつりの力学


中村 仁彦京都大学
永井 清京都大学
吉川 恒夫京都大学

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

本論文ではロボットの指や,複数のロボットの腕で協調して物体を操る問題の力学とその制御についての基礎理論を展開した。この問題は複数のロボット機構が物体に対して発生させる合力の発生の問題と,個々のロボット機構の発生力が物体の合力に対して持つ力の冗長性の問題からなっている。後者は特に「内力」と呼ばれるものになるが,これについて明確な力学的な説明を展開したのは本論文が初めてである。本論文では合力を制御することによって物体を操り,内力を制御することによって物体との接触を確実にするという観点を提案した。さらに接触の摩擦拘束を考慮した,内力の最適設計問題を非線形計画法で解くことを提案した。本論文の内力についての議論は,文献[1]で同著者らによってなされたロボットハンドの握力の定義についての議論を展開することで可能になった。
この基礎理論はさらに文献[2][3][4][5]において,動力学的な安定把握の問題や,歪エネルギーを考慮した最適把握の問題に展開された。また解説[6]では把持と操りを,拘束と拘束力の問題として整理がなされた。解説[7]では,操りの動力学と転がり接触の拘束運動の問題が述べられている。
拘束と拘束力が極めて重要になる問題として,いわゆるパワーグラスプの問題があるこれについては,著者らのグループによって一連の研究がなされた[8][9][10][11]。近年のロボットハンドに関する研究はさらに把握と知能の問題に対して新たな展開をみせている。著者らのグループでも,ロボットハンドの研究が反射的行動プリミティブの合成による行動獲得の研究に発展している[13][14]。ビデオクリップは学習によって獲得された反射によって球状物体を把握する三本指ロボットハンドである。

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対応論文


中村,永井,吉川:複数のロボット機構による協調的あやつりの力学,(PDF, 616KB)

日本ロボット学会誌, Vol.4, No.5, pp.489-498, 1986

関連論文


[1] Hanafusa, H., Yoshikawa, T., Nakamura, Y. and Nagai, K: "Structural Analysis and Robust Prehension of Robotic Hand-Arm System," Proc. '85 International Conference on Advanced Robots, Tokyo, Japan, pp.311-318, 1985.

[2] Nakamura, Y., Nagai, K. and Yoshikawa, T.: "Mechanics of Coordinative Manipulation by Multiple Robotic Mechanisms," Proc. 1987 IEEE International Conference on Robotics and Automation, pp.991-998, 1987.

[3] Nakamura, Y.: "Contact Stability Measure and Optimal Finger Force Control of Multi-Fingered Robot Hands," 1988 U.S.A.-Japan Symposium on Flexible Automation, Minneapolis, pp.523-528, July 1988.

[4] Nakamura, Y.: "Minimizing Object Strain Energy for Coordination of Multiple Robotic Mechanisms," 1988 American Control Conference, Atlanta, pp.499-504, June 1988.

[5] Nakamura. Y., Nagai, K. and Yoshikawa, T.: "Dynamics and Stability in Coordination of Multiple Robotic Mechanisms," International Journal of Robotics Research, Vol.8, No.2, pp.44-61, 1989.

[6] 中村: "把持とあやつり," 計測と制御, Vol. 29, No.3, pp.206-212, 1990.

[7] 中村: "指の制御," 計測と制御, Vol. 30, No.5, pp.395-399, 1991.

[8] Zhang, X-Y., Nakamura, Y., Goda, K. and Yoshimoto, K.: "Robustness of Power Grasp," Proc. IEEE International Conference on Robotics and Automation, San Diego, May, CA, pp. 2828-2835, 1994.

[9] 張, 中村, 吉本: "不完全な接触をもつ把持の力学的多面凸解析," 日本ロボット学会誌, Vol. 14, No. 1, pp. 105-113, 1996.

[10] 張, 中村, 吉本: "パワーグラスプを含む一般的な把持とあやつりの力学," 日本ロボット学会誌, Vol.15, No.2, pp. 45-53, 1997.

[11] 中村, 来島: "多面凸集合演算を用いたパワーグラスプの限界外力空間の計算," 日本ロボット学会誌, 15(5), pp. 728-735, 1997.

[12] 中村, 山崎,"反射行動の重ね合わせ理論とその多指ハンドの反射的把握動作への応用,"日本ロボット学会誌, Vol.15, No.3, pp.448-459, 1997.

[13] Nakamura, Y., Yamazaki, T. and Mizushima, N.: "Motion Synthesis, Learning and Abstraction through Parametrized Smooth Map from Sensors to Behaviors," Robotics Reseach -the 8th International Symposium, Yoshiaki Shirai and Shigeo Hirose (Eds), Springer, pp.69-80, 1997.

[14] Mizushima, N., Yamazakia, T. and Nakamura, Y.: "Synthesis, Learning and Abstraction of through Parameterized Smooth Map fromto Behaviors Skills Sensors," Proc. of IEEE International Conference on Robotics and Automation(ICRA99), Vol.3, pp.2398-2405, Detroit, Michigan, May, 1999.