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みのつぶ短信第2回「ロボカップの広がりと繋がり」


本エントリーは会長在任中に投稿された記事です。

今年のロボカップはオーストラリアシドニーで7月2日から9日までシドニー国際会議場で第23回目の大会として開催された.優勝チームなどの情報はウェブ(https://2019.robocup.org , 写真1,2)を参考にしていただくとして,今回はロボカップの歴史を簡単に振り返りながら,最近の活動を拾ってみる.

1997年に第一回を名古屋で人工知能の国際会議と一緒に開催したが,その際は,サッカーのみを扱ってきたが,以降,災害救助をメインとしたレスキュー,2050年の最終目標を目指し,次代,次次代の世代に夢をつなぐジュニア,そしてサッカーで培った技術を日常生活に活かす@ホームや,産業応用を目指したインダストリアルである(図1参照).サッカーの中型サイズの競技は一番広いフィールドで迫力ある戦いが繰り広げられている.決勝戦はオランダアイントホーフェンのTU/eと中国のWaterの両チームの戦いでここ数年は彼らのどちらかが優勝をさらっている.自在なパス回しなど一見の価値はあるので,必見ものである(https://www.youtube.com/watch?v=_Y5_iGxWFrQ).中型リーグは,全方位移動,全方位視覚がデファクトスタンダードとなっており,全方位移動の機構は当初さまざまなものが採用されてきたが,現在では,車輪の円周方向に小型の車輪を組み合わせたオムニホイールが標準で,商品としてもあるが,各チームとも自作で速度や制御安定性などでしのぎを削っている.写真3は九工大のHibikinoMusashiチームの台車である.また,TU/eは8輪車の試作を行っており,かなりのスピードアップを狙っているようだ.写真4は,その試作機の一部で4隅に2輪ずつ配置されている.2輪が通常の回転とともに,2輪のユニット自体が垂直軸回りに回転する機構である.機構が複雑だけに,制御が困難なようで,試合には出場していなかった.レスキューの実ロボットリーグでは,Fukushima以降,なるべく実際の災害現場での作業に適応可能なようにルール改正し,消防士や警察などの実際の救助にあたる現場の方々を招聘している.シドニーの大会では,現地のNew South Wales Police Rescue and BombDisposal Unitがフィールド設置に活躍するとともに,最新鋭のロボットのデモを行い,現場と競技会のギャップを埋めるようにルール改正やタスク設定を行っている.写真5は彼らのデモロボットと優勝チームの小型ロボットが写っている.このように現場との連携が社会に進出するロボットや人工システムにとって重要であり,ロボカップは互いが協力しあう場を創出しており,さまざまな形態で社会との結びつきを強める環境が重要である.

日本ロボット学会
会長 浅田 稔

 

写真1
写真1

 

写真2
写真2

 

写真3
写真3

 

写真4
写真4

 

写真5
写真5(photo taken by Raymond Sheh)

 

図1
図1