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国際会議報告:The 33rd IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Systems and Robots (IROS 2020)


主催:IEEE RAS & IES,RSJ,SICE
日時:2020年10月25日~2021年1月24日
会場:オンライン開催


 「consumer robotics and our future」をテーマにした第33回IEEE/RSJ International conference on Intelligent Systems and Robots (IROS 2020)は,当初,10月25日から10月30日まで,米国ラスベガスで開催される予定であったが,IROS2020組織委員会は,慎重に検討した結果,パンデミック状況下では現地開催やハイブリッド開催は困難と判断し,2020年9月に会議を完全オンラインで開催することとした.この段階では,採択された論文の最終投稿プロセスはすでに終了していた.本会での投稿総件数は,図1に示すように,2,996件(前年度比20%増)であった.投稿の内訳については,full paperが2,296件で,オプションのRA-Lettersは700件(前年度比41%増)であった.今回の採択率は全体で47.4%となり,full paperについては45.5%,RA-Lettersについては53.7%であった.これは2012年以降のIROSの平均採択率とほぼ同等である.

 

図1.IROSの参加・投稿・採択数の推移

 

 組織委員会は完全オンライン開催を決定すると共に,9月の後半には参加登録費を無料とすることを決定し,参加登録件数は10月末時点で11,250人に達した.さらに,2021年1月25日にオンラインプラットフォームを閉鎖した時点では,参加登録者数は最終的に20,000人を超えた.参加者の所属内訳は,大学が75%を占めその内の44%が大学院生だった.一方,企業からの参加率は20%と大きく増加した.地域別参加者の内訳については,アジア諸国の参加が大幅に増加し参加者全体の38%に達することが注目された.これに対し,アフリカ(1%),オセアニア(1%),南米 (4%)等の国の参加率はまだ低いが,無料参加登録や海外渡航を伴わないオンライン開催は,今後の参加登録を伸ばす要因になると思われる.

 テクニカルセッションに付随する企画については,プレナリー3件,基調講演9件,全日ワークショップ32件,半日ワークショップ3件,全日チュートリアル6件,および半日チュートリアル6件が実施された.

 オンライン講演会の実施形態としてはオンデマンド方式が採用され,予め発表者が制作した発表動画を,開催期間中の任意の時点で視聴できるようにした.そのプラットフォームとしては,時間帯を問わず全てのコンテンツに簡単にアクセスできるように設計されたWebベースのプラットフォーム「IROS On Demand」が開発された.ただし,いくつかのワークショップセッションを除きZoomやSlack等を用いたリアルタイムの質疑応答手段は無く,プラットフォーム上に,ビュー数の表示と共にコメントボックスが用意され,発表に対するフィードバック評価,参加者の質問に対する回答投稿に利用された.

 IROS2020の併設行事としては,Open Cloud Robot Table Organization Challenge (OCRTOC),「8th F1Tenth Autonomous Grand Prix @ IROS 2020,およびRobotic Grasping and Manipulation Competitionの3つのオンラインロボット競技会が開催された.

 3件のプレナリーの講演者は全員女性研究者で,日本からは東京大学の長井志江先生に「人間とロボットの認知発達:知性への新たな洞察」の講演を頂いた.その他の講演者は,スウェーデンKTHのDanica Kragic先生と,米国MITのCynthia Breazeal先生であった.

 オンライン開催への変更に伴い,産学連携のためのRSJランチなどの従来の現地開催RSJ企画は中止した.また,第15回PARSU SM(太平洋アジアロボティクス学会連合首脳会議)も中止となった.

 最後に,Covid-19の影響により非常に見通しが困難な状況下で,オンデマンドプラットフォームの急速立上げ,無料参加登録制の決断などで,ロボット工学に興味を持つ幅広い参加者を動員することにご尽力頂いた委員長のPaul Oh先生並びにIROS2020組織委員会メンバーの皆様に改めて感謝申し上げる.今後の国際会議においても,今回同様の状況となるリスクは残されており,IROS2020の取組みは,将来に向けた貴重な成功例となったと考える.

(Venture Gentiane:東京農工大学)