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みのつぶ短信第30回「女性による,女性のための,女性の国際会議:RO−MAN2022!」


前後の国内会議(後者はRSJ2022)にはさまれ,本年8月29日から9月2日にイタリアのナポリで開催された IEEE RO-MAN 2022の会議報告を日記風にたどってみる.


8月29日:WSの開催日であるが,直前までの国内出張のスケジュールにより,この日が出発日となってしまった.伊丹7:05発の便で羽田,フランクフルトと乗り継いでナポリ空港への到着は23時半頃であった.ロシアのウクライナ侵攻の影響により,羽田・フランクフルト便が北極周りで15時間かかり,出発空港から最終到着空港まで23時間半かかった.空港からのタクシーは,早いルートということで,GoogleMapが指す経路と逆方向の2.5倍ほどの遠距離で,「やられた!」と思ったが,あとで,聞いてみると,この経路経由でホテルにたどり着いたのは少なくなかったようで,ちょっと一安心.


8月30日:時差ボケもあり,早朝にメールチェックし,6時からの朝食にでかけた.エレベータ前で,Silvia Rossi実行委員長とAlessandra Rossi広報委員長(写真1)に会い,両氏と朝食をとりながら,開会式の構成などで会話を交わした.浅田が名誉委員長ということで,挨拶を頼まれ,「はいはい,何でもします.」と答えながら楽しく終えた.写真2は朝食会場からの眺めで海に浮かぶ要塞と呼ばれるCastel dell' Ovoが見える.朝食後散歩して近づいたら,3門の大砲が見えた(写真3).オープニング前の本会議室では,Silviaと副実行委員長のAntonio Sgorbissaがハイブリッドの準備を慌ただしくしていた(写真4).

 

写真1

 

写真2

 

写真3

 

写真4


さて,今回のRO-MANの統計情報をみてみよう.全投稿数は約380編で新記録を達成した模様.採択率は62%で,3 Parallel Sessions,31 Regular sessions,7 Special Sessions,3 Invited Speakers,19 Workshops/Tutorialsであった. 写真5に統計の一部を示す.in personの参加者が約300名,on lineが約140名,合計約440名に登録があり,盛会であった.

 

写真5


最初のキーノート講演者は,ドイツのアウグスブルグ大学の情報科学部のElisabeth André教授で「Towards Robots with Social Resonance: Principles, Challenges and Perspectives」というタイトルで,彼女の長年のマルチモダルの相互作用における様々な因子の重要性や課題などを示した.特に,パートナーとの対話時における間のとり方やアクションのコーディネーションが挑戦的課題として残っていることや,ELSIの課題の重要性を指摘した(写真6).

 

写真6

 


8月31日:この日は,南カリフォルニア大学のコンピュータ・サイエンス,神経科学,小児科学のMaja Matarić教授のキーノートで,「Robots as Mirrors of Human Nature: How to Create Human-Robot Interactions That Bring Out Our Best, Not Our Worst」というタイトルで,筆者が常々言い続けてきた「ロボットは人間を映す鏡」そのものの内容であった.新たな研究方向として,ロボットアフォーダンス,相互作用コンテキスト,マルチモダルの長期データ,個人に特定された反復モデルを示した(写真7).

 

写真7


この日はカンファレンスバンケットでバスで移動して,Villa Posillipoと呼ばれる海辺を見渡すオープンな会場で開催された.イタリアのバンケットの習わしで,最初の1時間レセプションで語り合い,それから食事に入る形で,当然のことながら,食事を終える頃には,日付が変わるころであった.イタリアには,コロナ前は頻繁に訪れていたが,ローマから南はシシリー島を除いて,訪問しておらず,今回始めてのナポリをパスタとワインで満喫した(写真8).

 

写真8


9月1日:この日は帰国の際に必要なPCRテストを受ける日だ.9月1日からしてくれたら良かったものの,何故か9月7日の水曜日から制限なしと,この日に政府要人でも帰国するのかと勘ぐりたくなる.ダウンタウンにあるクリニック(とても怪しげ)でテストを受けたあと,クリニックの隣の建物,名前もしらないが,記念に写真を撮った(写真9).

 

写真9


さて,会場のホテルに戻り,聴講していたら,翌日帰国便のフライトキャンセルのお知らせが来た.パイロットのストらしい.慌てて,ルフトハンザ航空のウェブで他の便の検索,事務所への電話と数回試みたが,全滅.殆どの便がキャンセルとのこと.日本のエージェントも電話するも営業時間外で誰も出ずで,万事休す.メールを出しておいたため,日本のエージェントから電話がかかり,便の検索をお願いするも,なかなか厳しい.このままでは帰国できず,RSJ2022にも出られなくなるかもと心配していたら,この日の夕方の便でフランクフルトまでいき,そこで一泊して,予定の便で帰国を試みては,との提案.ともかく空港に行って,交渉してみないとわからないとのこと.そこで,夕刻のセッション,Farewellパーティを諦め,急遽空港に向かった.空港のチェックインカウンターで若い女性の担当者と交渉はじめる.事情を理解してくれて,なんとか試みるとのことで,彼女の格闘操作30分あまり,無事にすべてのチケットを獲得し,これで,RSJ2022に出席できると一安心.


最後まで会議に出られなかったが,今回,もっとも印象に残ったのが,女性参加者,女性発表者の多さだ.帰国後,Silviaに訪ねたら,なんと40%の参加者が女性だったとのこと.ロボット関連の国際会議でこれは快挙だ.最後に,Silviaに送ってもらった写真を掲載する(写真10).女性による,女性のための,女性の国際会議だった!

 

写真10

 

浅田稔

元会長,現在,大阪国際工科専門職大学 副学長,及び大阪大学先導的学際研究機構 共生知能システム研究センター特任教授