1 はじめに
2025年9月2日(火)から5日(金)にかけて東京科学大学 大岡山キャンパスで開催された第43回日本ロボット学会学術講演会のセッションをまとめる.本内容は,身体可変構成ロボティクス(1/2)である.本セッションは4件の発表で構成されていた.
2 発表内容
2.1 組立型ロボット構成検証システムの更新と教育研究利用 [1]
モジュール化されたアクチュエータと部品を組み合わせてロボット構造を設計する既存のロボット構成ソフトウェア組立型ロボット構成システム (Robot Assembler) を基盤とし,システム構成の更新と統合が行われた(図1).これにより,ロボット構造の設計とシミュレーションによる動作検証を一貫して行うことが可能となった. ロボット開発では,機構設計,シミュレーション,プログラミングといった作業がそれぞれ異なる環境で行われることが多い.そのため,設計の修正と検証を繰り返す過程に冗長な手間がかかるという課題がある.この課題に対し,垣内らはオープンソースの統合 GUI 環境である Choreonoid を基盤とし,さらに開発環境として JupyterLab を統合した.これにより,ブラウザ上でロボットプログラミングとシミュレーションを一貫して実行できる環境が構築された.
筆者は,このような統合プラットフォームがロボット開発の敷居を大きく下げ,早期からものづくりやロボット技術への関心を高める可能性を有する点に関心を持った.

図1: ”組立型ロボット構成検証システム”構成図
2.2 virtual reality 空間上におけるロボット組み立てシステムの研究 [2]
PCのシミュレーション上でロボットを組み立てる際の直感的な操作性の課題を解決するため,Virtual Reality (VR) 環境上でロボットを組み立てる VR Assembler が提案された.既存のロボット設計支援システム Robot Assembler は, 3 次元のロボット部品を 2 次元のモニター上でマウスとキーボードを使って操作するため,初学者にとって構造を直感 的に把握することが難しいという課題があった.この課題を解決するため,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着し,VR 空間内でコントローラを使って,あたかも実物の部品を手に取って動かすかのようにロボットを組み立てるシステムが開発された(図2).このシステムは,RobotAssembler のプラグインとして実装されている.
筆者は,ロボット設計における直感的な操作性の課題に対し,VR環境を用いることで三次元構造の把握を容易にし,実物操作に近いインタラクションを実現している点に関心を持った.

図2: 組み立ての様子
2.3 手書きスケッチからロボット構成を生成する システムの研究 [3]
ロボットのモデルの設計において,現在では CAD のような設計ツールを用いる手法が一般的である.しかし,これら のツールは高精度な設計において非常に有用である一方,専門でないユーザにとって使いこなすことが容易ではないことが課題である.そのため,専門知識がない非専門家でもロボットを設計できるよう,手書きのスケッチからロボットモデルを自動で生成するシステムが提案された(図3).このシステムでは,入力されたスケッチ画像はニューラルネットワークにより解析され,ロボットの関節と作用点(手先など)の位置を推定する.ここでは,画像の各ピクセルに対してクラス分類を行う Semantic Segmentationの手法が用いられており,ニューラルネットワークとしてU-Net が採用されている.推定結果は関節と作用点の位置を示すヒートマップとして出力され,局所最大値検出を用いて座標に変換される.その後,グラフ構築アルゴリズム がそれらの点を繋ぎ合わせてロボットの骨格構造を決定し,シミュレータで動作する 3D モデルを生成する.
筆者は,手書きスケッチからロボットの骨格構造を推定し,動作可能な三次元モデルを自動生成することで,非専門家でもロボット設計を可能とするアプローチが提案されている点に関心を持った.

図3: 手書きスケッチからロボット構成を生成するシステムの研究
2.4 ヒューマノイドの転倒時の衝撃緩和に向けた折り畳み傘の開放・閉鎖の両立が可能な開閉機構の開発 [4]
実世界で活動するヒューマノイドは転倒によるハードウェア故障のリスクが高い.そのため,転倒時のハードウェア 損傷への対処が必要である.従来の衝撃緩和方策として,機体周囲の剛体フレームやエアバッグを備え付ける手法が あるが,欠点が存在する.まず,剛体フレームでは非常に大きなフレームを周囲に纏うことからロボットの可動域が 制限される.次に,エアバッグでは複数回の転倒や任意方向への転倒に対処ができない.これらに関連して,柔軟外 装を備える手法やバックパックに高耐久な設計を施す手法が存在するも,前者は剛体フレーム同様に関節の可動域制 限の問題が,後者では後方以外の転倒に対処できないという点がある.それらを受け,ヒューマノイドの転倒時の衝 撃緩和に向けた,折り畳み傘の開放・閉鎖の両立が可能な開閉機構が提案された.この手法では,折り畳み傘を利用 して通常時はコンパクトにたたまれている一方,転倒時には瞬時に展開することで衝撃を緩和する仕組みを実現している(図4).
筆者は,身近な存在である折り畳み傘をロボットの衝撃緩和機構として応用し,日常的な製品に着想を得ることで新たな機能や価値を創出している点に関心を持った.

図4: 折り畳み傘を活用した転倒時の衝撃緩和方策
3 おわりに
本稿では,第43回日本ロボット学会学術講演会 OS6: 身体可変構成ロボティクス (1/2) の報告をした.本セッションを通して,ロボット設計の敷居を下げるための支援技術に加えて,身近な構造を応用した新たな機構設計など多様な観点からの研究が提案されており,非常に興味深かった.
筆者自身も本セッションに参加し,質疑応答で質問した.各研究において,何らかの課題や制約を起点とし,それらを解決するために多様なアプローチが検討されている点が印象的であった. 以上を踏まえ,身体可変構成ロボティクスが今後さらに発展することを期待したい.
参考文献
[1] 垣内洋平,秋田光志朗,福島知樹,増沢広朗: “組立型ロボット構成検証システムの更新と教育研究利用”, 第43回日本ロボット学会学術講演会予稿集, 2E1-01, 2025.
[2] 福島知樹,垣内洋平,増沢広朗: “virtual reality空間上におけるロボット組み立てシステムの研究”, 第43回日本ロボット学会学術講演会予稿集, 2E1-02, 2025.
[3] 秋田光志朗,増沢広朗,垣内洋平: “手書きスケッチからロボット構成を生成するシステムの研究”, 第43回日本ロボット学会学術講演会予稿集, 2E1-03, 2025.
[4] 増渕泰樹,工藤俊亮,木村航平: “ヒューマノイドの転倒時の衝撃緩和に向けた折り畳み傘の開放・閉鎖の両立が可能な開閉機構の開発”, 第43回日本ロボット学会学術講演会予稿集, 2E1-04, 2025.
佐藤 希美 (Nozomi Sato)
2026年浜松未来総合専門学校 AI×コンピュータ科プログラムコース卒業. SLAM 技術および確率ロボティクスを中心とした学習・実装に取り組む.(日本ロボット学会学生会員)


