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みのつぶ短信第16回「ロボット競技会の役割」


本エントリーは会長在任中に投稿された記事です。

タミヤRCカーグランプリというかつてのTV番組をご存知だろうか?1984年10月5日から1999年3月28日まで放映していたらしい.日曜の朝8時半ごろだと記憶する.筆者の次男がミニ四駆のレースをかぶりつきで見ていたこと思い出す.子どもたちがあのコーナーをより速く駆けるためには,ショックアブソーバをどのように調整すればいいかなどと競っていた.当時思ったのは,これは,生きた機械工学,電子・電子工学だが,こども達はそんな学問のかけらなど気にするわけではない.学んでいるというよりも,遊びの過程の結果として学んでしまったということだ.大学では,機械工学と電気工学が別の学科であり,工学の基幹をなすが,互いに言うこと「聞かん」と犬猿の仲のところが多い.これでは,ロボットを始めとする人工システムが動かない.部局や専攻に分けて,閉鎖的になっているところが多いからである.タミヤRCカーグランプリの現代版がロボット競技会,通称ロボコンである.筆者はロボカップを最先端研究を公開の場で競うことで,科学・技術の発展を意図して,仲間と一緒に創設し,研究論文を多数発表してきたが,それだけでなく,人材育成の場としての評価も高い.現在の日本の大学の組織構造ではできない側面である.最近の研究を含めたロボカップのレビューをだしたが,そこには,研究以外の貢献にも触れている[1].そのレビューではスペースの関係であまり触れていないのが,ロボカップジュニアである.小学生から高校生までをターゲットにして,競技会を通じて,科学技術の知識獲得のみならず.さまざまな国際交流イベントが企画されている.このようなロボット競技会は参加してきた学生達が,そのノウハウを活かすとことを通じて,次世代エンジニアを育成しようとするのが,一般社団法人次世代ロボットエンジニア支援機構(所在地:京都府相楽郡精華町、代表理事:川節拓実)である.ロボコンOB/OGが集まって,以下の事業を行っている.

  1. 社会連携に基づくロボコン出場チームの多面的な支援による若手エンジニア育成
  2. ものづくりへの参加障壁を下げることによるエンジニアを目指す若手人口の増加
  3. 多種の勉強会開催による世代や分野、業種を超えたエンジニア生涯学習の実現
  4. エンジニアをカッコよく憧れの職業に感じてもらうための広報、情報発信
  5. 上記の実施によって日本のものづくりを活性化するエンジニア育成エコシステムの創出

何を隠そう,代表理事の川節拓実君は,筆者の元教え子であり,研究に加えて,このような社会的な活動も行っている.最近,大学内の教員で高専OB/OGをよく見かける.筆者の周りにもおり,いずれも優秀だ.その中のひとりが川節君である.このような組織がしっかり活動し,技術の面だけでなく,志向性のある道徳倫理も合わせもつ次世代エンジニアを育成してくれると期待している.ということで,今年の7月22日に顧問に就任した.

 

日本ロボット学会
会長 浅田 稔

 


写真1:左から川節代表理事、浅田、廣本理事

 


写真2:一般社団法人次世代ロボットエンジニア支援機構のホームページ


[1] Minoru Asada and Oskar von Stryk. Scientific and Technological Challenges in RoboCup. Annual Review of Control, Robotics, and Autonomous Systems, Vol.3, No.1, pp.441--471, 2020.